2023/12/04
外国人労働者を受け入れている技能実習と特定技能の両制度の見直しを検討してきた政府の有識者会議は24日、技能実習に代わる新制度「育成就労」(仮称)の創設を盛り込んだ最終報告書を取りまとめた。途上国への技術移転を掲げ、1993年から30年続いてきた技能実習を事実上廃止し、育成就労の下で未熟練の外国人を正面から労働者として受け入れ、育成する方向性を打ち出した。
最終報告を踏まえた見直しが実現すれば、外国人労働者の受け入れ政策の転機となる。ただ、自民党内には最終報告に対する慎重意見もあり、政府は与党と調整した上で、来年の通常国会に関連法案を提出したい考えだ。
最終報告によると、育成就労は3年間の在留を基本とし、未熟練の外国人労働者を確保して、即戦力の人材と位置付けられる「特定技能1号」の水準まで育成することを目的とする。より高レベルの熟練技能が求められる「特定技能2号」の試験に合格すれば、家族帯同の無期限就労が可能になり、育成就労と特定技能を通じて、永住の道が開かれることになる。
(毎日新聞 11月24日)
新制度の焦点は転籍問題である。日本弁護士連合会は転籍支援の在り方について見解を表明した。「新たな制度下の監理団体が中心となって行うこととしつつ、ハローワークも外国人技能実習機構に相当する新たな機構と連携するなどして転籍支援を行うこととしたことは、ハローワークと新たな機構の役割を明示したものとして評価できる」と評価したうえで、こう付言した。
「実習実施者によって構成されていることの多い監理団体による支援を中心とするのではなく、ハローワークが中心となって、新たな機構や分野所管省庁と連携しながら支援を担う体制を整備すべきである」
転籍先の紹介はハローワークの専門で、小規模な監理団体には荷が重いだろう。
一方、新制度では地方から都市部への人材流出が懸念される。技能実習から特定技能1号に移行した人材が転入超過になっているのは東京・名古屋・大阪の三大都市圏で、他の地域は転出超過である。新制度によって地方の企業は受け入れても都心に流出してしまう事態が想定される。
転籍に伴う企業の費用負担も難題である。転籍前の在留期間や転籍前の企業が負担した育成費用を考えて、転籍前の企業と転籍後の企業が負担し合う仕組みだが、スムーズに合意しあえるのかどうかは不透明だ。
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