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トップ後継の選別・育成 対応企業26%どまり

 日本の上場企業で経営者の後継を選別・育成する「サクセッションプラン」の導入が遅れている。デロイトトーマツグループと三井住友信託銀行の調査では、対応している企業が全体の26%にとどまった。「指名委員会」などトップ人事を監督する体制づくりは進んだが、企業価値向上を担える経営者選びなど機能面ではなお課題がある。
上場する1093社を調査した。社長や最高経営責任者(CEO)の後継者を選別・育成するなど「人材を設定・管理している」としたのは283社(26%)だった。うち最終候補者までリスト化している企業は143社(13%)とさらに少なかった。
2023年に新社長が就任した資生堂やリコーは選任経緯を明示している。資生堂は19年からサクセッションプランを取締役会で承認し、候補者選びや育成計画に着手。リコーでは21年以降、指名委での関連審議を12回開催したとしている。同社ではCEOが年に1度、候補者案と育成計画を作成し、11月の指名委員会に諮っている。
(日本経済新聞 11月18日)

「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2022」(主催:日本取締役協会、後援:経済産業省、金融庁、法務省、東京都、東京証券取引所/日本取引所グループ)で経済産業大臣賞を受賞したのは荏原製作所である。
選定の基準は「社長・CEOの選任、後継者計画のプロセスにおいて優れた取組が行われており、社長・CEOのリーダーシップが結果を出していると株式市場から評価されている」。
荏原製作所は以下の取り組みが評価された。①現社長は法定の指名委員会による3年間にわたる複数回のインタビュー等を含む選任プロセスを経て選任されている②指名委員会は代表執行役社長をメンバーとせず、非業務執行の取締役会長及び2名の独立社外取締役の計3名で構成し、委員長は独立社外取締役が務めるなど執行と監督の分離を徹底的に意識している③6年間におよぶ育成・選定プロセスである代表執行役社長の承継プランを策定し公にするなど、指名委員会と執行側が連携して時間をかけて「人材育成」と「社長の選定」を実施している。
さらに現社長について「中長期的な企業価値の向上の視点から、収益性を重視しつつ、人的資本や技術に根差した経営を行っている」「社会課題解決を通じて世界の人を幸せにしたいとの思いを持って経営を行っている」「ROEやROAといった財務パフォーマンスが上昇傾向にあるなど、高い業績をあげている」と評価している。
荏原製作所がサクセッションプランのコンサルティングを行なえば、実効性の高いプランが普及するのではないだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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