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「介護離職」防止へ企業向けガイドライン、年度内に策定

 政府は今年度、会社員が親などの介護で離職するのを防ぐ手立てを、企業向けの指針(ガイドライン)としてまとめる。介護を家族内の問題だけではなく、企業の経営上の課題と捉え、社員向けの相談窓口を設置するといった具体的な支援体制を盛り込む。両立支援のノウハウが少ない会社で、介護離職が増えるのを食い止める。
 経済産業省は来月にも有識者による検討会を設置し、指針を策定した後は速やかに企業に周知する。
 同省によると、指針には育児・介護休業法で定める介護休業(通算93日)の活用法や、介護保険サービスの使い方に関する社員研修のノウハウを盛り込む。さらに取り組むべき支援策として、社内に相談窓口を設置したり、社会福祉士など外部の専門家と提携し、介護事業者に提出する書類作成を肩代わりしたりすることも示す。家事代行や食料品の配達など日常生活の支援サービスの紹介も促す。こうした取り組みを進める企業の具体例も記載する。
 同法では、家族を介護する社員を支援するため、企業に対して介護休業のほか、短時間勤務や残業の免除などの制度を義務づけ、社員への周知を促している。
(読売新聞オンライン 9月19日)

介護離職とともに増加傾向にあるのが、仕事をしながら家族介護に従事するビジネスケアラーある。
経済産業省の将来推計では、ビジネスケアラーは2030年には約318万人に上り、家族介護者833万人の約4割を占める。ビジネスケアラーは介護離職者と同様に40~50代が多く、職場の中枢である。昭和の言葉を用いれば働き盛りである。
この世代の戦線離脱の影響は大きい。ビジネスケアラーによる経済損失は、経済産業省の推計によると約9兆円という。内訳は、介護離職による労働損失額が約1兆円、介護離職による育成費用損失が約1000億円、代替人員の採用コストが約1000億円、仕事と介護の両立困難による労働生産性損失額は約8兆円である。
経産省は支援策として日常生活を支援する介護保険外サービスの拡充をめざす方針だが、職場もテレワークやフレックスタイム制を導入したうえで、社員の都合に合わせた柔軟な運用に取り組まないとビジネスケアラーが介護離職に追い込まれかねない。
ただ、大企業には取り組めても中小企業には難しい。産業振興を旨とする経産省と社会保障を所管する厚生労働省は、政策のベクトルを異にするが、この問題は連携して支援しないと改善できない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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