2023/07/26
人手不足が深刻になる中、シニア人材の処遇を現役並みに改善する動きが出てきた。住友化学は2024年から60歳以上の社員の給与を倍増。村田製作所も24年4月以降、59歳以前の賃金体系を維持しながら定年を65歳に引き上げる。「人生100年時代」を迎え、労働市場で比重が高まる60代以上が意欲を持って働くシニア雇用の環境づくりが欠かせない。
住友化学は24年4月から定年を60歳から段階的に引き上げ最終的に65歳に変更。 引き上げ対象は組合員の営業、製造、専門人材ら全職種で、年収は59歳末時点と同水準にする。60歳以降は希望者を再雇用してきたが、給与水準は4〜5割程度に抑えていた。今回の改定で、60歳以降の給与水準は約2倍に増える。
現在3%の60歳以上の比率は10年以内に17%に高まる見通しだ。「シニア人材の一層の戦力化が急務」(人事担当)として労使で合意に至った。
村田製作所は60歳以上の賃金体系を見直すと同時に、64歳までの間で自由に定年を設定できる選択定年制を採用し、キャリアを自律的に決められるようにする。
(日本経済新聞 7月17日)
この記事によると、住友化学、村田製作所以外にも、JX金属は定年を65歳に引き上げて給与水準を維持、TOWAは60歳以降の再雇用後も正社員並みの待遇、ロイヤルHDは60~65歳の再雇用のシニア従業員の年収を標準モデルで1割値上げ、日本ケンタッキー・フライド・チキンは店長職の年齢上限を65歳まで5年延長、リンガーハットは正社員の定年廃止を検討――など各業種で定年延長と定年後の処遇改善が進んでいる。
そもそも再雇用期間の就業はお礼奉公ではない。かりに定年後の年収が現役時の70%に低下すれば、本人にとってパフォーマンスは元気時代の70%でよいと意識するのが自然だ。
しかし企業側は雇用する以上、たとえ嘱託でも100%のパフォーマンス発揮を要求する。このギャップを埋めるには、現役並みの年収を支払う以外にない。「法令に従って定年後も雇ってあげる」という姿勢から「定年後も働いて戦力になっていただく」という姿勢に改めないと、シニア社員の戦力化は難しい。
その一方で、50歳以上の社員に希望退職を迫る黒字リストラを実施する企業がある。このタイプは、たぶん向こう10年近くにかけて人員のメドが付いているのだろう。シニア活用ではなく世代交代を優先できる分、組織の活力を維持しやすい。
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