Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

5月の実質賃金、1.2%減 物価高で14カ月連続マイナス

厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動を加味した実質賃金は前年同月比1.2%減だった。減少幅は今年1月以降で最小だったものの、14カ月連続のマイナス。現金給与総額(名目賃金)は17カ月連続のプラスだったが、物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状況が続いた。  
減少幅の縮小について、厚労省の担当者は企業側の賃上げ回答が相次いだ2023年春闘を挙げ「効果が段階的に表れているのではないか」と指摘。企業ごとに賃金の改定や支払いの時期にばらつきがあることから、今後の推移や物価の動向を注視するとしている。  
5月速報によると、現金給与総額は2.5%増の28万3868円。うち基本給を中心とした所定内給与は1.8%増の25万2132円で、4月確報の0.9%増に比べて伸び率が大きかった。  現金給与総額を就業形態別で見ると、一般労働者が3.0%増の36万8417円、パートタイム労働者が3.6%増の10万2303円だった。
(共同通信 7月7日)

経営努力だけで賃上げができない業界にとって、春闘による賃上げに不公平感が否めない。たとえば収入が公定価格である医療機関や介護施設では、2024年4月が診療報酬と介護報酬の改定期であるため、今春に物価高騰を反映させた賃上げができなかった。
春闘の賃上げ率3.69%だったが、介護分野の賃上げ率は1.42%にとどまった。関係者が懸念しているのは異業種への人材流出で、22年度の異業種への離職は前年度比約30%増加した。異業種からの人材流入で人手不足をカバーしなければならないのに、逆の流れが起きている。
こうした実情を踏まえて、介護関連団体は合同で5 月 16 日、岸田文雄首相に「物価・賃金高騰対策に関する要望書」を手渡した。賛同した団体は、全国老人保健施設協会、全国老人福祉施設協議会、日本認知症グループホーム協会、日本慢性期医療協会、日本介護福祉士会、日本介護支援専門員協会、日本福祉用具供給協会、全国介護事業者連盟、高齢者住まい事業者団体連合会、全国介護事業者協議会、日本在宅介護協会の11団体。
11団体は①国が講じた処遇改善等を経ても全産業平均との月額給与差額7万円開いている②物価高騰対策の臨時交付金が積み増しされているが、賃金引き上げまで行う余裕はない――という理由で、「介護事業所において一般企業と同程度以上の賃金引き上げができるよう、令和5年度における緊急的な措置や令和6年度の介護報酬改定における対応を実施すること」と要望した。
医療介護業界によっては報酬改定が春闘のようなものだ。社会保障費の抑制を指向する財務省に対して、厚労族議員を援軍に攻防が展開されていく。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。