2023/05/18
連合は10日、2023年春闘の第5回集計結果を公表した。
基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率は、300人未満の中小労働組合で平均3.35%(8328円)。急激な物価上昇を背景に前年同時期の2.02%を大幅に上回ったが、会社や地域によって賃上げ率は二極化している。
金属産業の中小労組が多く加盟するJAMは、ベア獲得額が0~3万円と組合ごとに差が広がった。経営側も「今回はばらつきが大きかった」(中小企業家同友会全国協議会の広浜泰久会長)と振り返る。
カギを握ったのは、原材料価格の高騰分や労務費を製品価格に転嫁できたかどうか。東京都内の中小金属製品メーカーは1万円の賃上げを実現。ただ、経営者の男性は「賃上げ分を価格に乗せないのが『常識』。今回のようなチャンスはまれだ」と話す。
都市部と地方の格差も目立つ。JAMの集計で鳥取、島根両県はベアの平均が5074円と、東京・千葉を1000円近く下回る。JAM山陰の前田陽生書記長は「格差が広がれば衰退が加速する」と危機感を募らせる。(時事通信 5月11日)
いくつかの調査で賃上げの二極化は十分に予想されていたが、結構な賃上げが実施された給与所得者も、物価高を吸収できているとは限らない。
厚生労働省が発表した3月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上の事業所)によると、1人当たりの実質賃金は前年同月比2.9%減で、12カ月連続の減少だった。名目賃金に相当する現金給与総額は29万1081円。前年同月に比べて0.8%増え、15カ月連続で前年同月を上回っていた。
就業形態別では、正社員など一般労働者は1.3%増、パートタイム労働者は2.1%増。産業別では運輸業・郵便業、宿泊業・飲食サービス業などがとくに伸びた。
それでも賃上げは物価高を吸収できず、12カ月連続で賃下げがつづいているに等しい状況だ。賃上げが実施されなかったり、小幅な賃上げにとどまった企業の社員は、生活設計の見直しに迫られているはずだ。
現に総務省が発表した3月の家計調査によると、消費支出は、前年同月比で1.9%減少した。たとえゴールデンウイークに散財しても、引き締め路線の修正は難しい。予定以上に散財すれば、一層の引き締めに入るだろうから、消費関連産業は新たな知恵を絞らないと消費してもらえなくなる。
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