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三菱電機、顧問を廃止 過去の幹部の影響力排除

 三菱電機が2023年3月末をもって、執行役など常勤の役員経験者を対象とした顧問制度を廃止していたことが分かった。同社は品質不正問題を受けて企業統治(ガバナンス)の改善を進めている。経営の透明性を向上させ、過去の経営幹部が影響力を持っているとの印象を払拭する狙いがありそうだ。
廃止したのは顧問に相当する「シニアアドバイザー制度」。取締役や執行役、上席執行役員の経験者が対象で、3月末時点で合計20人が同職にあった。21年に品質不正問題を受けて社長を辞任した杉山武史氏が同職に廃止により、会社での籍がなくなった。前会長の柵山正樹氏は22年に同職を辞任している。
 今後は経済団体や業界団体の公職といった対外的活動をする場合に限り、嘱託契約を結ぶようにする。三菱電機は「嘱託は経営には一切関与しない」としている。
 嘱託の人選などに取締役会が関与する。1年ごとに契約を見直し、在任は最大で6年間とする。業界団体の役員を務めている元社長の下倉節宏氏や山西健一郎氏は23年度の1年間のみの嘱託になるという。(日本経済新聞 5月3日)

 社長や会長を経た後のポストに顧問、参与、相談役などの名誉職があるが、大方は余禄のポストである。さらに役職名に「最高」「名誉」「特別」が付くと、いちだんと余禄の度合いが高まっていく。
貢献具合に応じた名誉職ならわからないでもないが、社長人事に隠然たる影響力を行使する例がけっして少なくない。これらOBたちに人選の了解を得ることが、不文律として受け継がれているのだ。
院政に対して見解を求められた企業は「長年の経験をもとに大所高所から助言をいただいている」などと答えるのが通例だが、助言の実態で多いのが社長人事の人選なのである。この役割を指名委員会に移行させれば院政を解消できるのだが、事はそう簡単ではない。
名誉職の廃止を決議することは、現役役員にとって、自身を役員に引き上げてくれた元上司・先輩に対して弓を弾く行為にも見えかねない。先送りしたい難題なのである。他方、
名誉職の側から廃止を提案してくれることは、まずもって期待できない。
 高位の役職に就いた人がみずから影響力を手放すことは、存在価値の放棄にも等しいのである。東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードに名誉職の廃止を明記するのがよいだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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