Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

賃上げ実施の中小19% 城南信金など調査

城南信用金庫と東京東信用金庫が10~12日、取引先の中小企業1970社を対象に実施した調査によると、この春に賃上げをした企業は全体の19%だった。賃上げする予定があるとした企業もあわせると52%だった。大企業の賃上げの波及効果や人手不足への対応などが要因となり、中小企業にも一定程度の賃上げが浸透している。
賃上げを実施した企業と予定している企業に賃上げ水準を聞いたところ、2%以上3%未満が最も多.い25%、続いて1%以上2%未満が18%、4%以上5%未満が10%だった。6%以上と回答した企業も8%あった。
1月時点の調査で賃上げすると予定と答えていた企業は27%だった。城南信金は大企業の賃上げや新奥菜人手不足への対応など複合的な要因で中小企業でも賃上げが進んだとみている。
コスト増に伴う価格転嫁は、一部できていないが52%、すべてできているが14%で、全体の3分の2の企業が商品・サービスの価格の上乗せをしていた。従業員が確保できるかについて、かなり不足しているは7%、やや不足しているが41%と半数近くの企業は人手不足と回答した。
(日本経済新聞 4月21日)

 中小企業の賃上げは地方でも進んでいる。NHKの報道(4月14日)によると、佐賀県商工会連合会の調査(回答120社)で、賃上げを「実施済み」と回答した企業が34%、「実施予定」と回答した企業が16%で、あわせて50%に達した。
 日本銀行が4月20日に発表した「地域経済報告」からも同様の実態がうかがえる。
「半導体関連企業が高賃金で人を集めており、契約社員や期間従業員の確保が難しくなっ ているため、賃金を引き上げて人材確保に努めている」(熊本・電気機械)「ここ数年はベアを見送ってきたが、足もとの物価上昇や社会的な賃上げの動きを踏まえ、2023 年度はベアを含む4%の賃上げを実施予定(福島・自動車販売)
 賃上げの原資を確保できるかどうかは、ひとつは価格転嫁の状況である。
「労働需給のタイト化や物価上昇を受けて、大企業ほどではないが、中小企業においても、賃上げの機運が広がっている。実際、価格転嫁が進んでいる先を中心に、前年の実績を上回る賃上げ幅で妥結する動きがみられている」(名古屋・経済団体)。 ・
 一方で、賃上げを実施したくても実施できない苦渋の判断も報告された。
「賃上げが社会的要請と位置付けられているが、エネルギー・原材料価格の上昇などにより収益が悪化していることから、賃上げには踏み切れていない」(下関・食料品)
 賃上げの次は夏の賞与が焦点になるが、そこまで視野がおよぶ中小企業はどのぐらいだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。