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国内運用会社トップの任期、大手の7割3年未満

金融庁は資産運用業の経営課題を分析したリポートをまとめた。日本の大手資産運用会社の約7割でトップの在任期間は3年未満で、グループ内の他社の出身者も約7割を占めている。資産運用会社は岸田文雄首相が掲げる「資産所得倍増」のカギを握るが、「資産運用会社としての成長より、グループ内の人事上の処遇を重視しているとの懸念をもたれる」と問題視した。
金融庁は日本の大手金融機関系列の運用会社11社と世界大手30社の経営トップの選任状況を調査した。
海外大手では在任5年以上10年未満のトップが約4割と最も多く、勤続10年以上の内部昇進者が約5割に達している。海外トップの約6割は就任前に20年以上の運用会社での勤務経験がある。日本では資産運用の経験が乏しい3年未満のトップが約4割弱で、なかには資産運用会社での経験が全くないままトップに就く例もあるという。(日本経済新聞 4月22日)

金融庁は、世界の大手資産運用会社のホームページなどから経営トップの選任理由を抽出して「資産運用業高度化プログレスレポート 2023」に掲載している。以下のような選任理由が公開されているという。
「39 年の投資運用経験、全て当社」「サクセッションプランにより、CEO(最高経営責任者)に就任」 「共に働いた前社長が述べるところによると、彼は当社の顧客向けサービスに強い情熱を持っており、グローバルな視野と業務のあらゆる局面で強いリーダーシップを持っている理想的な経営トップである」 「アジア太平洋、米州、欧州の当社ミューチュアル・ファンド部門を率いてきた」「金融セクターのアナリスト、ポートフォリオ・マネージャー、ファンドの運用・調査部門の最高責任者(CIO)としての 30 年にわたる経験」。
 在任3年未満では、これらの要件には程遠いだろう。なぜ日本の資産運用会社の経営トップは在任期間が短いのか。ひとつの要因は、多くの資産運用会社が独立系でなく金融機関グループに属していることである。
 金融庁によると、非独立系の資産運用会社のシェアは 85%に達している。一方、ミューチュアル・ファンドと ETF の運用資産残高合計で、世界上位 30 位内の資産運用会社の大半が独立系だという。
 非独立系ならトップ人事は定期人事異動の対象に組み込まれ、十分な経験を重ねる期間が提供されない。グループ経営にあって、特定のグループ会社の経営トップだけを長期間在任させれば独立王国ができあがってしまい、ガバナンスが利かなくなる。欧米に追随する人事への移行は難儀ではないのか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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