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「リファラル採用」に大手も注目 即戦力人材を社員が紹介

キャリア採用の新手法として、社員が人材を紹介・推薦する「リファラル採用」が注目されています。一般的な公募形式ではなく、社員の人的ネットワークを通じて優秀な人材獲得を目指す取り組みです。従来は人材確保に苦戦する中小企業などが取り入れていましたが、近年は大手企業にも広がっています。
富士通は2018年4月に導入し、これまでに約210人を採用しました。ターゲットはICT(情報通信技術)人材です。人工知能(AI)やセキュリティー分野の専門人材はニーズが高く、獲得競争は激しくなるばかりです。「募集を掛けて待つだけでなく、求める人材を探し直接アプローチする、攻めの採用スタートが必要になってきました」(広報IR室)
社員の照会が採用の起点ですが、応募後の採用プロセスは通常のキャリア採用と同じです。ただ、会社の内情と応募者の資質を共に知る社員が仲介することで、「聞いていた仕事と違う」「求めていた人材像に合わない」といった転職後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。無事採用に至ると、社員に10万円の紹介料を払います。
(日本経済新聞 3月20日)

1990年代の前半にさかのぼるが、都内の経営コンサルティング企業が「紹介採用」と呼んで、社員の紹介による中途採用を始めた。採用に至ると、ひとりにつき5万円の報酬が支払われた。報酬目当てに紹介に入る社員が続出するのではないか。そんな話題も出たが、紹介採用に関与した社員はごく数人にとどまったという。
紹介する以上は相応の責任がともなう。ビジネスでの人の紹介は、結果が良くて当然、芳しくなければ紹介者に不満が向かうのが常だ。当方の要求をきちんと汲み取ったのだろうか、目が曇っているのではないかと。
採用では紹介された候補者の採用を決定するのは人事部だが、紹介者にとっては、採用後に組織になじみ、成果を発揮すると確信できる人でなければならない。期待通りの戦力にならなければ気まずい思いをしてしまう――多くの社員が慎重になって(この人、どうかな?)という程度の知人は紹介できないと考え、紹介を控えたのである。
このコンサルティング会社は紹介採用によって募集広告費を削減できただけでなく、採用後のミスマッチを回避できたという。
ただ、リファラル採用は仲介報酬制を設けなくとも推進されるのが自然ではないのか。報酬が支払われれば紹介するというスタンスでは、いかにも寂しい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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