2023/03/07
人材不足のため介護施設が休止・閉鎖する事例が、青森県内で増えている。事業譲渡交渉の動きもあり今後、生き残りをかけ合併・買収(M&A)が進むと予想する関係者もいる。県は新年度、人材確保のため、医療・介護職員の子育て世帯の移住支援を行う。福祉関係者からは「意欲的な取り組みだが、国内で人材を奪い合っても効果は限定的」「今、県内で働く人の処遇改善が大切」との声も上がる。外国人材確保に向けた環境づくりへの支援を求める意見もある。
県南地方の社会福祉法人は、2021年にデイサービスなど3施設を閉鎖した。理由は「人材不足」。施設長は「近隣事業所に共通する課題は職員確保。しかし、具体的な対策がない。退職を食い止めるのに精いっぱいだ」と語った。
八戸市の医療法人が経営していた介護施設は昨年閉鎖した。担当者は「職員不足が理由」とし、詳細は語らなかった。
「ある法人からM&Aの打診が来ている」と明かすのは青森市の社会福祉法人の理事長。「話を持ち込んだ施設は現在黒字だが、職員確保がままならないので、買い手を探しているという。実際、介護現場には若い人が集まらない」 (東奥日報 2月25日)
厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査」によると、2020年度の全サービス平均の収支差率は前年度の3・9%から0・9%減の3・0%だった。コロナ禍による利用者の減少だけでなく、人手不足によるサービス縮小も大きく響いた。
介護事業者の倒産も増加している。東京商工リサーチの調査によると、22年の「老人福祉・介護事業」倒産は介護保険制度が始まった2000年以降で最多の143件(前年比76.5%増)を記録した。同社は「21年は、コロナ関連の資金繰り支援策などが奏功し、一転大幅な減少に転じた。だが22年はその反動増と、コスト上昇分を介護サービス料金に転嫁できず、支援策の縮小、人手不足なども追い打ちをかけた」と分析している。
介護事業者の収入である介護報酬は公定価格なので、光熱費や食材費の高騰が反映されない。価格が変更されるのは3年ごとの介護報酬改定だが、社会保障関連予算の抑制政策から改定率がプラスでも微々たる水準にとどまっている。次の改定期は24年4月だが、防衛予算増額のあおりも受けて、介護業界が望むような改定は期待できないだろう。
経営難に直面する介護事業者には小規模事業者が多い。救済手段のひとつはM&Aだが、買い手側にとってシナジー効果を期待できる小規模事業者はどれだけあるだろうか。
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