2023/02/14
入社してすぐ転職を考える若者たちを「転職ネイティブ世代」と呼ぶそうです。終身雇用が揺らぐ時代、自分の「市場価値」が高まる実感が持てないと、不安や焦りが強まるといいます。「早くスキルアップしたい」「成長できない職場で時間を無駄にしたくない」…。広島でも切実な声が聞こえてきます。
「だって、ゆるいんです。ぬるま湯に漬かって、つぶしの利かない人になるのが怖くて」。福山市の男性(24)は、入社9カ月で、中堅メーカーを辞めた。
配属されたのは本社から離れた営業所。同期はおらず、中年の先輩が4人だけ。自社製品の特長をきちんと理解していない人もいて、やる気を感じられなかった。業務へのアドバイスもなく放置される日々。何もしなくても注意されないが、学ぶこともない。帰り道はため息が出た。「俺、きょう何してたんだろう。この会社、大丈夫かな」。転職サイトに登録したのは、1年目の秋。行き先が決まって退職を告げたときの上司の反応にはちょっとびっくりした。
男性が辞表を出したのは、広島県内の中堅メーカーに入社して9カ月目のこと。上司は「何が不満なの?」とキョトン顔だった。(中国新聞デジタル 2月4日)
終身雇用を前提にしていれば、ゆるい職場への危機感はあまり感じないだろう。ゆるい環境のまま定年まで過ごせればそれに越したことはない。労働市場での評価にさらされることもないのだから、自己啓発やスキルアップに邁進する必要もない。環境に合わせておけばよいのだ。
しかし、いまは社内価値だけでなく労働市場での価値を向上させないと、リストラの対象にされたときに思うような転職ができない。雇用が保障されなくなった会社員は個人事業主に近づきつつある。ゆるい職場に危機感を覚える若手世代が増えるのは当然である。
この問題は将来の戦力ダウンにも進展し得るが、あまり退職者がつづくと、いずれは経営危機にも直面する。背景が何であれ、退職者の増加は人手不足を引き起こし、事業が廻らなくなって業績にも影を落とす。
帝国データバンクによると、2022年に判明した人手不足倒産140件のうち、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の人手不足倒産は、少なくとも57件判明した。3年ぶりの増加である。
業種別では、建築士や施工管理者など、業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の離職によって事業運営が困難になった企業などが目立つという。
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