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介護職員の3%賃上げ、4分の1が制度活用せず

政府が実施した介護職員の月3%程度(9000円)の賃上げで、対象施設の約4分の1が制度を活用していないことが、厚生労働省の調査で分かった。職員が少ない施設の運営事業者にとっては、申請の事務負担が大きいことなどが影響したとみられる。厚労省は手続きを簡素化し、利用を促す方針だ。
 補助金を財源とした介護職員の3%程度の賃上げは昨年2~9月に実施した。厚労省によると、補助対象の要件を満たした介護施設約15万8000か所のうち約3万9000か所で制度が活用されていなかった。
 政府は実施にあたって、補助金が職員の処遇改善以外の目的に流用されないよう、計画書と実績報告で二重チェックし、守られない場合は返還を求める仕組みを導入した。しかし、一部の運営事業者には書類作成の負担が重い上、事務職と介護職との間で賃金の不公平感が生じる懸念もあることから、制度の活用に消極的なケースがあったという。(読売新聞オンライン 1月17日)

 介護職員の賃上げ支援制度が活用されていないことが人手不足の遠因かどうかはともかく、人手不足は介護事業者の経営を危機に追い込んでしまう。
東京商工リサーチによると、2022年の「老人福祉・介護事業」倒産は介護保険制度が創設された2000年以降で最多の143件(前年比76.5%増)を記録した。「老人福祉・介護事業」の倒産は、介護報酬のマイナス改定や人手不足、競争激化などで16年は100件を上回り、以降も高水準で推移していた。
そこにコロナ感染拡大が直撃し、利用控えが広がる。20年に過去最多を更新した。21年は、コロナ関連の資金繰り支援策などで倒産は減少に転じたが、22年はその反動に加えて、コスト上昇が響いた。介護保険サービスの料金は公定価格なので、コスト上昇分を料金に反映できない。利益が減少するだけである。
しかも法定人員が揃わなければ事業所を運営できず、事業全体を縮小せざるを得ない。東京商工リサーチは「今後も介護報酬は大幅なプラス改定の可能性が低く、報酬単位の加算が取れない事業者の淘汰は避けられないだろう。2023年の介護事業者の倒産は増勢がさらに強まる可能性が高い」と見通している。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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