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東証1部上場企業でプロ経営者は0・3%

 一言で言うと、日本では狭い意味での経営のプロ、すなわち資本関係の少ない他の上場企業で経営の経験をした経営者によって経営される企業は、全くと言っていいほど存在しないということである。

今回の分析では、約1900社の8年分のデータを用いている。これらの約1万5千の事例のうち、プロ経営者によって経営されているのはわずか39社だった。たとえば21年には1996社のうち、プロ経営者によって経営されているのはわずか5社であり、全体の0-3%にすぎない。このことは、日本において経営者の労働市場は事実上存在しないということを意味している。
(中略)
一方、「資本関係を問わず、他の上場企業で経営を経験したことのある経営者」の割合は、典型的には上場子会社もしくは上場孫会社の経営を経験した後に、上場親会社の社長・CEOとなるパターンだろう。日本ではこのようなケースが多いのではないかと予想されたが、結果はさほどでもなかった。
(日本経済新聞 1月13日)

この記事は「経済教室」に掲載された久保克行・早稲田大学教授の論考である。
かつてプロ経営者と呼ばれた人を数名取材したことがあるが、ひとりは「プロ経営者という言葉はチャラい。そう呼ばれることは軽く見られているようで、いい感じがしない」。もうひとりは「経営者を引き受けた以上は経営のプロであるべきなので、そもそもプロ経営者という言葉がおかしい」。ふたりともプロ経営者という言葉に否定的だった。
どんな職業でも、自分を「プロ」とか「専門家」と口にするのは虚勢を張る場面に多いが、一定以上の実績があれば虚勢は不要である。「プロ」とか「専門家」は他人が評価して使う呼称である。
メディアが「プロ経営者」と呼ぶ人は高水準の実績を持ち、経営のプロだから異業種の経営でも引き受けるのだ。自分を「経営のプロ」と呼ぶ必要はない。
さて、経営者の選任は、内部昇格がよいのか外部招聘がよいのか。それは「人材は育てるもの」と考えるのか、それとも「人材は見つけてくるもの」と考えるかの違いである。内部昇格による候補者が存在しない場合に外部招聘に切り替えるのが通例だが、この方法は今後も続くだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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