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物価高反映の賃上げ 経営側は理解も労使の思惑にずれ

岸田文雄首相は2日、経団連のモビリティー(乗り物)産業に関する委員会の共同委員長を務める十倉雅和会長や、トヨタ自動車の豊田章男社長らが出席した会合で、これまでの賃上げなどの取り組みについて「政府として高く評価している」として、引き続きの協力を求めた。ただ、賃上げに向けた環境は整ってはいない。
物価上昇に危機感を持つ労働側は令和5年春闘で大幅な賃上げを目指す。連合は基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)要求を月給の3%程度とし、定期昇給分と合わせ5%程度の賃上げを求める。経営側は物価高の反映を容認しつつも一律の賃上げに否定的で、年明けに本格化する労使交渉は難航しそうだ。
消費者の生活は苦しさを増す。生鮮食品を除く9月の消費者物価は13カ月連続で上昇し、前年同月比3・0%と大幅な伸びとなる一方、名目賃金を消費者物価指数で割って物価の影響を除いた実質賃金は4~8月はマイナスで推移し、正味の購買力は目減りが続く。(産経新聞 11月2日)

 物価高に追い打ちをかけるように住宅ローン金利がアップする。メガバンク3行が11月の住宅ローン金利について、固定期間10年の基準金利を引き上げる。りそな銀行が10月比0.03%、三井住友銀行が0.10%、みずほ銀行が0.15%を引き上げる。
三菱UFJ銀行は現行のまま据え置くが、地方銀行も後につづいて続々と引き上げるだろう。
 住宅ローン利用者にとってはダブルパンチで、これまで賃上げに慎重な姿勢を示していた経団連も、来春の賃上げに向けて動き出した。もはや連合が賃上げ要求にかかわらず賃上げを呼びかけざるを得なくなった。
11月2日付け共同通信によると、経団連が2023年の春闘で、物価高を念頭にベースアップに関して会員企業に積極的な賃上げを要請する方針を固めた。2023年1月に取りまとめる春闘での経営側の指針「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」に「賃金引き上げのモメンタム(勢い)の維持・強化に向けた前向きな対応を」と明記するそうだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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