2022/11/08
日立製作所は、新人のデータサイエンティストをものづくりの現場に送り込み、3カ月間の武者修行をさせている。工場のベテランとの議論を通じ、「机上の空論」ではない課題解決の手法を考案する。高度人材の獲得競争が激化するなかで成長を実感できる場をつくり、現場の社員たちにもデジタルトランスフォーメーション(DX)への意識改革を期待する。
「これだと使いにくいね」。データサイエンティストの清水目拓馬さんが開発したツールは、現場従業員にダメ出しされてしまった。日立入社から1年もたたない2021年1月、送り込まれた先は家電子会社、日立グローバルライフソリューションズ(GLS)の工場(茨城県日立市)だった。
(中略)
製造現場ではデータサイエンティストが導き出した結果を拒否した事例もあったという。現場の肌感覚とどこかずれている。人工知能(AI)分析の根拠が見えない。(日本経済新聞 10月28日)
昭和の時代にはセールスエンジニアという職種は珍しかった。営業は営業、技術は技術と分業化され、営業は開発現場を知らず、技術は顧客ニーズを知らないというギャップがあった。エンジニアが営業に出向けば顧客の現場を知って、それを開発に反映できるうえに、営業先で技術に関わる問題を解決できる。
ホンダなど自動車メーカーでは、昔から三現主義が文化になっていた。現場を歩いて、現物を見て、現実を認識するという三つの現である。現場に出なければデータのみのバーチャルな理解しかできず、定性情報も入手できない。データの背景を把握できない。
介護施設の幹部に転職した元銀行支店長は、転職して1年間は介護現場で働いて夜勤も経験したが、その経験が活きたと話す。
「最初から本部勤務だったら理屈だけの職員になってしまったかもしれない。現場実態は数字に反映されるが、実態を知らないと的を射た戦略を策定できない」
DX時代でも三現主義は変わらない。むしろ現業部門以外は現場からかい離しがちな時世だけに、改めて三現主義が問われている。
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