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物価上昇率をカバーする賃上げ 首相「労使で議論を」 春闘に向け

岸田文雄首相は4日、首相官邸で開いた「新しい資本主義実現会議」で、2023年の春闘に向けて「物価上昇をカバーする賃上げを目標に、企業の実情に応じて労使で議論していただきたい」と述べ、賃上げ実現に期待を示した。月内に策定する総合経済対策に、賃上げにつながる労働市場の改革策などを盛り込むことも確認した。
厚生労働省によると、22年の民間主要企業の春闘賃上げ率は2・20%で、前年(1・86%)を上回った。だが、資源価格の高騰などで物価が上昇。実質賃金は7月まで4カ月連続でマイナスとなっており、物価の上昇に賃金が追いついていない。  
今年8月の全国消費者物価指数は前年同月比2・8%上昇と消費増税の影響を除くと30年11カ月ぶりの大きさとなっており、家計が圧迫される懸念が高まっている。  
昨年11月の同会議では、22年春闘に向けて「3%を超える賃上げを期待する」としていた。今回は具体的な水準は示さなかったが、賃上げの継続を求めた。(毎日新聞 10月4日)

 岸田文雄首相は10月3日の衆議院本会議で行った所信表明演説で「構造的な賃上げ」を打ち出した。
岸田氏は、日本企業で長年にわたり賃上げが実現しない理由に「高いスキルの人材を惹きつけ、企業の生産性を向上させ、さらなる賃上げを生むという好循環が機能していないという構造的な問題がある」と指摘。そのうえで「このサイクルが動き出せば、人への投資がさらに進み、この好循環は加速していく。そのため、賃上げと労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題の一体的改革を進める」と決意を表明した。
これだけ賃上げがクローズアップされているのは、物価高が勢いを増しているからだ。賃上げしなければ家計がひっ迫してしまう。
岸田氏は物価高にも言及。「官民が連携して、現下の物価上昇に見合う賃上げの実現に取り組む。 公的価格においても、制度に応じて、民間給与の伸びを踏まえた改善等を図るとともに、見える化を行いながら、看護、介護、保育をはじめ、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、負担軽減を進める」と述べた。 
看護、介護、保育の専門職については処遇改善が実施されているが、それでも十分な水準に達していないという。あえて職種に触れたのは、関連団体から公費投入を強く要請されているからだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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