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2040年には医療・福祉分 野の就業者数が96万人不足

厚生労働省職業安定局「雇用政策研究会報告書」(2019(令和元)年7月)によれば、 今後の就業者数については、経済成長と労働参加が進むと仮定するケースでは、2040 (令和22)年に6,024万人となると推計されている。2021年現在の6,713万人から減少 するものの、2040年は大幅な人口減少下にあることに鑑みればその減少は相当程度抑えられているといえる。
この経済成長と労働参加が進むと仮定するケースでは、医療・福祉 分野の就業者数は974万人(総就業者数の16%)と推計されている。他方、医療・介護 サービスの2018(平成30)年の年齢別利用実績を基に、人口構造の変化を加味して求めた2040年の医療・介護サービスの需要から推計した医療・福祉分野の就業者数は1,070 万人(総就業者数の18~20%)が必要となると推計されており、96万人の差が生じている。(令和4年版厚生労働省 9月16日)

 
人手不足に悩むのは医療・福祉分野だけではない。IT分野も土木建設分野なども同様に数十万単位の人手不足が想定されている。人材の争奪戦が激しくなっていく。
人手不足対策として介護事業者のなかには、80歳までの雇用に踏み切る例が増えている。高齢者を戦力に組み込まないと、もはや現場が廻らないのだ。
だが介護事業のなかでも施設系サービスなら施設内での就業なので、高齢者でも対応できる業務があるが、訪問系サービスの担当は難しい。1日を通して移動を繰り返すので、高齢者には体力的に厳しいうえに車の運転というリスク要因もある。
国は社会保障費の抑制を目的に、在宅医療や在宅介護の拡充を進めているが、担い手の確保がネックになる。開業医の平均年齢は60歳を超え、在宅医療の担い手としては不安が大きい。在宅介護も同様で、ある介護事業者の経営幹部はこう懸念する。
「全国の訪問介護事業所を見ると、多くの事業所で60代の職員が多いのに、若返りを図るための職員がいない。たぶん5年以内に働ける職員が激減して、事業所数は半分ぐらいに減るのではないだろうか」
 人口減少に関わる問題は手の打ちようがない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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