Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

病気でキャリアを捨てないで 支援体制づくりに企業動く

70歳現役社会といわれる昨今。就業年齢が延びるにつれ、がんなどの病気を抱えながら働く人も増えています。医療技術の進歩で、大病もキャリアのピリオドではなくなっています。貴重な人材を失わないために、企業も両立支援に力を入れ始めています。 「泣き暮らした時期もあるけど、前向きに考えればキャリアの可能性も広がる」。8月に明治安田生命保険が開いたオンライン交流会で、がん経験者の女性社員が笑顔を交えて体験談を語りました。2014年に乳がんが見つかり、今も治療が続きますが、今春、支社長に昇格しました。  同社は今年、社内ネットワーク「ピア・サポート・ボンド」を立ち上げました。治療と仕事を両立する社員が参加します。「もし健康に問題を抱えていたとしても働いてほしい。悩みを共有できる場をつくり、不安を軽くしたい」と、淡路なな恵ダイバーシティ推進室長は話します。  厚生労働省の19年「国民生活基礎調査」を元に推計すると、働きながらがん治療している就業者は44.8万人に上ります。(日本経済新聞 9月12日)

 がん治療と仕事の両立については厚生労働省も対策に力を入れている。「第3期がん対策推進基本計画」「働き方改革実行計画」に基づき、治療と仕事の両立をサポートする仕組みを提言した。 「事業場における治療と仕事の 両立支援のためのガイドライン」(令和4年3月改訂版)には、治療と仕事の両立支援を行うための環境整備として①事業者による基本方針等の表明と労働者への周知②研修等による両立支援に関する意識啓発③相談窓口等の明確化④両立支援に関する制度・体制等の整備――を提示した。  さらに治療と仕事を両立させるプログラムに盛り込む事項として▽治療・投薬等の状況及び今後の治療・通院の予定▽就業上の措置及び治療への配慮の具体的内容及び実施時期・期間 ・作業の転換(業務内容の変更)・労働時間の短縮 ・就業場所の変更・治療への配慮内容(定期的な休暇の取得等)等▽フォローアップの方法及びスケジュール(産業医等、保健師、看護師等の産業保健スタッフ、人事労務・担当者等による面談等)――を挙げている。  がんに限らず治療と仕事の両立を図れる体制を整えることは、健全経営を評価する基準のひとつに設けてよい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。