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「国によるパワハラ」3年に1度失職するハローワーク職員の憂うつ

コロナ禍で失業状態が長期化する中で、ハローワーク(公共職業安定所)は利用者の生活不安の声に耳を傾けつつ、適性を見極めて就職あっせんする心強い存在だ。各都道府県の労働局の雇用失業情勢に応じた対策をする窓口となり、就職困難者を支援する最後のセーフティーネットともいえる。 だが、利用者に対して失業を解消する立場のハローワークの職員が、実は自らの雇用も守られていない。「国によるパワーハラスメント」とも呼ばれる制度によって、非常勤職員が職を追われ精神的苦痛を強いられている実態があるのだ。
(中略)
 1年契約という短期雇用。契約の更新は毎年あるが、3年が上限と決められているため、それ以降は公募に挑戦しなければならない。就職して13年目のベテランになるが、経験値で特別扱いされることもなく、3年ごとに履歴書を提出して、外からの応募者に混ざって採用の可否を待つ。
(FRIDAYデジタル 6月13日)

 ハローワークの非正規雇用職員は年収300万円程度だが、ほとんど残業がなく、休日もきちんと消化できる。カウンター越しに求職者の相談に乗る仕事がハードかどうかは、当人の適性によるだろう。
 採用業務経験の有無よりも、異なる業種の中小企業を複数渡り歩いた経験を持つ人のほうが、転職の実態に通じていて相談員にふさわしい。ただ、その相談員も契約期間が残り1年を迎えると、来年はカウンターの向こう側に身を置き、相談される側から相談する側に転じかねない。
ハローワークでは、失業者予備軍が失業者の相談に乗っている。どこか倒錯した光景だが、これが現実である。ある相談員に「立場上、自分にふさわしい求人情報をいち早く入手できるという有利な立場ではないのか?」と訊いたところ、こう説明してくれた。
「そう見えるかもしれないが、ネットで求人を検索できるので有利な面は何もない。ネット検索がはじまっていなかった昭和の時代には有利だったと聞いているが、ハローワークの相談員というキャリアが転職に有利に働くことはないだろう」
それでも人材紹介会社のキャリアカウンセラーなら、相談員の経験は活きるのではないのか。
「いえ、私たちの仕事は求職者のスキルや人柄に対する目利きではないので、人材スペックの評価能力を養えることはない。求職者の採用実績に対してインセンティブが支払われるのなら、求人企業と求職者にもっと入り込むだろうが、固定給だから仕事は事務的になってしまう」
 相談員の契約期間終了後の就業状況を調査したら、何が見えてくるだろうか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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