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後継者難倒産が過去最多 都内、21年度86件

後継者がいないために倒産や廃業をする企業が東京都内で増えている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行政の資金繰り支援策で企業倒産件数は低水準に抑えられているが、後継者難による倒産は2021年度に過去最多を更新した。経営者の高齢化が進む中、金融機関などは事業承継や事業再生の支援強化を急ぐ。
「早く後継者を決めなければ……」。都内で内装業を経営する80代女性は危機感を口にする。社長の夫は90歳を超えた。後継者候補として迎え入れた社員との調整もうまく進まず、脳裏に”廃業”の2文字がよぎる。女性は「取引先との人間関係が重要な仕事。経営者として任せられるようになるには何年もかかる」と事業承継の難しさに直面している。
 東京商工リサーチの調査では、21年の後継者難による都内の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は86件。中小・零細企業が中心で、統計を取り始めた13年度に比べ倍増した。特に21年度は前年比で40・9%増え、増加ペースが大幅に加速した。
(日本経済新聞 4月8日)

後継者難による倒産や廃業の増加に対して、政府はM&Aによる事業承継に重点を置いている。
中小企業庁は「中小企業のⅯ&Aは年間4000件弱に留まり、潜在的な後継者不在の中小企業の数(127万社)からして不十分」という問題意識を踏まえて、10年間で60万社(6万社/年×10年)の第三者承継の実現をめざす方針を掲げた。
 目標は、2025年までに70歳以上となる後継者未定の中小企業約127万社のうち、黒字廃業の可能性のある約60万社の第三者承継を促すこと。目標達成に向けて、中小企業庁は「機運醸成・環境整備」「マッチングの円滑化」「マッチング後の取組支援」による「第三者承継支援総合パッケージ」を公表した。
パッケージに組み込まれている事業引継ぎ支援センターのマッチング支援は、20年度実績で、事業引継ぎ成約件数が1379件(前年度比117%)と過去最高を記録。同様に相談者数も1万1686者(前年度比 101%)と過去最高を記録した。
日本商工会議所調査によると、コロナ禍の影響で売高が50%以上減少した中小企業のうち、事業承継時期を後ろ倒しにした比率は16・4%で、売上高が減少している企業ほど後ろ倒しにしている。
倒産や廃業に向かっているが、この流れを止めるのは難しい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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