Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

コロナ禍で地元志向の就職が増加 地方の多様な雇用の機会創出が喫緊の課題に

「就職の明治」として名高い明治大学・就職キャリア支援センターの原口善信さんも、例年より地方への関心が高いと話す。
「2020年の学内Uターンガイダンスには、前年の2倍以上が参加しました。Uターンへの意識は高まっていると思います。地方企業で内定が目立つのは、地銀と有名メーカーです」     
オンライン就活が主流になったコロナ禍で、地方企業と学生の出合いが増えている。マイナビキャリアリサーチラボ・主任研究員の東郷こずえさんは、22年3月卒業予定の大学生・大学院生5910人に調査した結果について話す。
「地元就職の希望者が5年ぶりに増加に転じました。ここ数年、学生にとっては売り手市場で地元で就職する意識が薄れていました」
マイナビの調査(3440社)によると、37.7%の企業がコロナ禍前と比較して「他エリア在住の応募者が増えた」と回答し、「同じエリア在住が増えた」(計14.1%)を大幅に上回った。前出の22年卒者への調査では、「働く場所が自由になった場合」と仮定すると「東京に住みたい」学生は12.7%で、前年比2.4ポイント減。一方で、「地方に住みたい」は57.0%で前年比2.2ポイント増えた。
(AERA 2022年1月17日号)

地方での就職が増加する傾向は、社会全体が分散型に移行する兆候ではないだろか。受け入れる地方にとっては、人口減少・少子高齢化が避けられない以上、関係人口の増加にシフトする以外にない。
就労機会の創出に向けて、自治体が推進しはじめたのはワーケーションの受け入れである。
長野県は「信州リゾートテレワーク」と題するプロジェクトを進めている。県内に滞在して仕事をする人・企業を増やすことで、地域経済活性化 、新たなビジネス創出、地域づくりの担い手確保を図り、関係人口の創出・拡大をめざしている。
40を超えるリゾートテレワーク拠点が、 地域の特性に応じたリゾートテレワークプランを提供し、信州リゾートテレワーク公式サイトには、長野県信濃町で行われた脳波測定によるリモートワークの実証実験の結果、 従業員の創造性や精神衛生に一定の効果があることが示されたことが紹介されている。
北海道では「北海道型ワーケーション」によって、道と共同、または単独でワーケーション事業 に取り組む市町村が40市町村に達した。
企業の組織形態も本社への中央集権型から就労場所へと移行していくのだろうが、現業部門は容易に動かせない。ジョブ型雇用が普及すればワーケーションを推進しやすくなるが、その一方で、就労場所を移動できない現業部門の人手不足は一層深刻になるだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。