2021/07/06
厚労省は25日、裁量労働制が適用される労働者の実態調査結果を公表した。1日の平均労働時間は適用されない労働者より約20分長く、週平均でも2時間以上上回った。制度が必ずしも長時間労働の抑制につながっていない現状が浮き彫りになった。
裁量制を巡っては18年、安倍首相(当時)が時短効果を強調。だが根拠とした厚労省の調査に不適切なデータが次々と発覚し、政府が適用業種の拡大を断念した。経済界は拡大を求めるが、労働組合などの反発が強まる可能性がある。
調査は19年11~12月に実施。裁量制適用の有無で分類した計約1万4千の事業所と約8万8千人の労働者から回答を得た。(共同通信 6月25日)
裁量労働制の導入によって労働時間を短縮できれば、社員にメリットが出るが、社員は自分の裁量では仕事を選べる立場ではない。たとえ自分が提案した仕事でも上司から指示されて着手する。当然、会社側には、支払う給与が一定なら、できるだけ多く働いてもらおうと意図する心理が働く。いまの時代、社員の健康管理も踏まえて仕事を指示する流れにあるが、健康管理を踏まえる会社ばかりではない。
裁量労働制が“定額働かせ放題”に走りやすく、厚生労働省の調査で時短効果が認められなかったのは必然ともいえる。長時間労働文化が浸透している産業界にあって、給与が定額なのに労働時間が減少することは、なかなか考えられない。飛びぬけた成果を発揮すれば、さらなる成果を求めて負荷を与えるが、負荷を与えることには本人に成長機会を与えるという“大義名分”も含まれる。
裁量労働制の普及は、定額料金を支払ってコンテンツやサービスを利用するサブスクリプションが雇用にも横展開されたような状況である。
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