2021/11/05
総務省が29日発表した9月の完全失業率(季節調整値)は2.8%で、前月から横ばいだった。新型コロナウイルス感染症の影響が出ている状況に変わりはないものの、3カ月連続で同率となっており、雇用状況に落ち着きもみられる。厚生労働省が発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.16倍で、前月から上昇した。
労働力調査の期間は9月末。緊急事態宣言が19都道府県、まん延防止等重点措置が8県と、全国の広い地域で公衆衛生上の措置がとられていた。
男女別の完全失業率(季節調整値)では、男性が2.9%と前月から0.2ポイント低下。女性は2.6%と前月に比べ0.1ポイント上昇した。
就業者数(実数)は6679万人で、前年同月に比べて10万人減少した。6カ月ぶりの減少。産業別では「情報通信業」と「医療、福祉」がいずれも前月から20万人増加した。一方、「宿泊業、飲食サービス業」が同34万人、「生活関連サービス業、娯楽業」が同27万人それぞれ減少した。(ロイター 10月29日)
人手不足に悩む「医療、福祉」の就業者数が前月から20万人増加したと報告されている。職種別の数字は報告されていないが、最も人手不足の深刻な介護職の雇用が増えているのだろうか。
長年、介護職の最大の供給源は養成校と呼ばれる福祉系専門学校だった。ところが、多くの福祉系専門学校は学生数の定員割れが著しく、しかも学生には中高年世代の学び直しが相当な割合を占め、次いで留学生が占めている学校が多い。
中高年世代には、たとえば30代の学生には介護福祉士資を取得して介護職への転身をめざす人が多いが、学生には60代以降の人も少なくない。この世代は介護職へのキャリアチェンジを考えているわけではない。
60代以降の学生には、親の介護や自身の老齢化に備えて介護の知識とスキルを習得しておきたいと考えている例が多く、介護業界にとっては雇用の対象になり得ない。つまり福祉系専門学校は人材供給源として期待できなくなっている。
雇用環境が回復すると「医療、福祉」には人材が流れてこないのが通例である。人手不足対策は、まずは離職の防止以外にない。
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