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三菱電機、社外取過半に

検査不正問題を受けて7月末に昇格した三菱電機の漆間啓社長は30日、日本経済新聞の取材で、社外取締役を過半にして経営を監視する「外部の目」を増やす考えを示した。企業風土や人事制度の改革など中長期の課題を検討する組織「変革チーム」も新設する。ただ、同社はこの数年、不正が発覚しては再発防止を誓うことを繰り返してきただけに、信頼回復の道は険しい。
三菱電機では6月、長崎製作所(長崎県時津町)で製造した鉄道車両向け空調装置などで、不正検査が長年にわたって横行していたことが発覚した。必要な検査を省略したり顧客との契約とは異なる方法を採ったりしていた。検査不正は過去数年、これ以外の製品でも相次いで表面化した。漆間氏の就任後に明らかになったものもある。
一連の品質不正問題は企業統治(ガバナンス)の不全を浮き彫りにした。漆間氏は「監督側の取締役会に対して執行側が情報を適時適切に伝えられていなかった」と述べた。
(日本経済新聞 8月31日)

パワハラや不正行為が横行する原因は、組織風土が病んでいるからだ。プロパー社員から取締役に昇進した人はその会社の風土に染まっている。いかに視野が広く、すぐれたバランス感覚の持ち主でも例外ではなく、思考様式や価値判断基準、行動様式などは風土に由来する。
新卒で入社として同じ会社に何十年も勤務すれば、“会社の常識”から脱皮できないどころか、勤続年数を重ねるたびに拘泥するようになる。善悪を法令ではなく“会社の常識”で判断することにも無自覚になっていく。
いきおい風土の健全化を導くには限界があり、社外取締役を増やして外部の目を導入したという体裁をとるのだが、社内取締役と執行役員を入れ替えない限り、抜本的な改善までは期待できない。会社の風土に染まっていない中途入社組でないと、風土にメスを入れる作業は難しい。
独立社外取締役の役割・責務について、東京証券取引所にコーポレートガバナンス・コードには「経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成 長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行う」「経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行う」などが規定されている。   
社外取締役はあくまで助言者・監督者であり、当事者ではないため、風土の改善まで期待できない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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