2021/07/29
米国で経営者の高額報酬に対する批判が強まっている。2020年度の主要企業の最高経営責任者(CEO)の報酬額は19年度比で微減にとどまった。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ業績に比べて減少率は小幅で、従業員給与との差も広がる。ゼネラル・エレクトリック(GE)やスターバックスでは株主の過半数が反対するなど、格差の象徴として圧力が強まっている。デロイトトーマツグループが、日米欧の主要株式指標に採用されている大企業378社を対象に調べたところ、20年度の米国のCEO報酬額の中央値は15億8千万円だった。前年度から2%減で、主要500社の業績の落ち込み(13%減)よりも小さかった。日本は8%減の1億2000万円、英国は3割減の3億3000万円、ドイツは横ばいの6億9000万円だった。日米の差は13倍と前年ドより広がった。(中略)一般従業員との格差は広がっている。コンサル会社の米エクイラーは米主要500社について、経営トップの報酬が自社の平均的な従業員の何倍かを示す「ペイレシオ」を調べた。6月時点の集計で193倍となり、17年の実績(159倍)から一段と拡大した。米有力企業の経営者は「ステークホルダー資本主義」を掲げ、従業員の待遇改善を約束するが、最大の問題である給与格差はてつかずだ。
(日本経済新聞7月21日)
昭和の時代には、日本では社長の年収が新入社員の7倍といわれていた。社長は新入社員の7倍働くというのが理由で、新入社員の年収が300万円なら社長の年収は2100万円だった。この水準が高いのか低いのかはあまり議論されなかった。(こんなものだろう)と思われていたのだろう。当時の社長はプロパーが大半で、年収に株価連動の要素が入っていなかったので、現在
のような格差は開いていなかった。デロイトトーマツグループの調査では、日本の大企業社長年収の中央値は1億2000万円だが、これは日本企業の社長としてはトップクラスの水準である。企業規模の幅を広げないと現状は見えてこない。参考になるのは労務行政研究所の調査である。調査対象は、全国証券市場の上場企業3667社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)71社の合計3738社。調査時期は2020年7月20日~9月28日。この調査によると、会長が4790万円、社長が4554万円と4000万円超の水準。副社長は3644万円、専務は3139万円と3000万円台、常務は2341万円と2000万円台。取締役(兼務は除く)1837万円。大学卒・総合職25歳の従業員のモデル年収は386万円で、社長の約11.8倍だった。やはり中小企業も含めた平均値を取れば、社長報酬は驚くほど高くはない。
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