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雇調金特例、年末までの延長検討…最低賃金引き上げ受け企業負担下支え

政府は、雇用を維持する企業を支援する「雇用調整助成金」について、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた上限額引き上げなどの特例措置を今年末まで延長する方向で検討に入った。現在の期限は9月末だが、最低賃金(時給)の引き上げ額の目安が過去最大の28円となり、企業の人件費負担が増すことから、特例の延長で下支えする。厚生労働省と経済産業省が21日の経済財政諮問会議に提案する方針だ。特例措置は、休業の場合、手当の助成金の1日あたり上限額を約8300円から1万5000円に引き上げている。中小企業向けの助成率も3分の2から最大10割としている。ただ、特例措置はこれまで何度も延長されており、10月以降の助成率は中小企業で最大9割などと縮小される可能性がある。政府は今後、別の助成金制度の拡充を組み合わせることなどを含め検討する。

(読売新聞オンライン7月20日)

7月16日に閣議決定された2021年版「労働経済の分析」(労働経済白書)によると、「雇用調整助成金」などの支援策によって完全失業率が抑制され、2020年4~10月の上昇を2.6ポイント程度抑えて月平均2.9%にとどめた。同年4月には休業者が前年同月比で420万人も増え、完全失業率は同年10月に3.1%まで上昇した。だが雇用調整助成金の効果で、完全失業率はリーマン・ショック後の5.5%を下回る水準に抑制された。一方、失業の抑制によって異業種への労働移動は進まず、成長産業や人手不足産業のテコ入れが停滞する。産業構造を考えれば失業の抑制にはマイナス面もあるが、労働者本人にとってはどうか。キャリアチェンジといえば聞こえはよいが、異業種への転職にはリスクがともなう。とくに40歳を過ぎてからは、一般に未経験分野への適応力が鈍化する。現職に踏みとどまれるのなら踏みとどまったほうが現実的だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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