2021/06/15
新型コロナウイルス対策に伴う3回目の緊急事態宣言が発令されるなか、転職市場で求人需要がじわりと戻ってきた。過去2回の時は下回っていた、コロナ前の水準を超えた。国内ではワクチン接種が本格化している。経済活動の正常化を念頭に、人材を確保する企業の動きがうかがえる。
エン・ジャパンの転職サイト「エン転職」の求人掲載件数を緊急事態宣言の期間に絞り比較すると3回目の期間中(4月25日以降)は、5月31日までの合計で前年同期の2・1倍。19年の同時期と比べても8%増えた。
1回目の宣言(20年4~5月)では、19年の同時期に比べ半減した。宣言は全国に広がり、飲食店や娯楽施設で休業が相次いだ。経済の先行きが見通せず、企業はコスト削減へ「リーマン・ショックよりも急速なスピードで採用を見送った」(エン転職の岡田康豊編集長)
(中略)
3回目の宣言中の現在は「ワクチン接種後の世界を想定した人数確保といった採用ニーズが出ている」(岡田編集長)。職種別でみると、IT(情報技術)、webなどの技術系が19年比5割増加。業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を担う即戦力人材が伸びる。電子商取引(EC)のサポート人材の求人も目立つ。
(日本経済新聞 6月4日)
経済が再開した米国では、4月の非農業部門の求人件数が統計を開始した2000年12月以降で最高を記録し、約930万件に達した。日本では6月20日に緊急事態宣言が解除された場合、飲食店の営業時間および酒類提供や、テレワークから出勤への復元がどうなるかが消費動向に大きく影響する。
ワクチン接種の進行も経済に連動するが、菅義偉首相は6月9日に開かれた党首討論で、ワクチン接種を希望する国民全員に11月末までに接種することを宣言した。この宣言を受けて、経済再開を見込んだ即戦力の採用意欲は高まっていくだろう。もちろん新たな変異株が発生して、ふたたび緊急事態宣言が繰り返される可能性もあるが、企業は2年間の低迷を取り戻して次のステップに進まなければならない。
その最強の戦力がIT人材でだが、IT人材の台頭は企業の人事を大きく一変させる。
IT人材採用ニーズの突出やジョブ型人事制度に浸透によって、職種間の給与格差が顕著になっていく。人材の流動化と相まって、就社ではなく名実ともに就職の時代が到来し、ビジネスパーソンは職人へと向かっていく。この流れが好ましいのかどうか。
専門スキルを強化して転職するなどステップアップには好ましいが、ジョブ型人事では成果主義が一層高まるだけに、息が抜けなくなるのではないか。もっとも、心身を削りながら出世と高収入をめざすよりも、ほどほどに働き、生活も楽しむというスタイルが普及すれば、ステップアップという概念も変わっていく。
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