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すき家ゼンショー「2030年まで毎年賃上げ」労使合意

 牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングスが、基本給の水準を底上げするベースアップ(ベア)を2030年まで毎年実施すると労使合意したことが分かった。外食産業は新型コロナ禍で苦境が続くが、従業員に安心して働いて消費を活性化してもらうため、異例の決断に踏みきったとしている。
 対象は正社員(現在約1180人)で、賃上げ率は毎年交渉する。アルバイトなど非正社員の時給も段階的に上げていく方針。労使合意には、業績悪化による希望退職の実施などのリストラを30年までしないことも盛り込まれた。
 同社は13年からベアを続けており、30年まで続けば18年連続になる。広報担当者は「個人消費の源泉は給与。(賃上げが)1年だけだと貯金に回るので、長期で安心して働けることが大事になる。うちが上げることで、他の企業も続く流れをつくって日本経済を盛り上げたい」と話す。
 ゼンショーは今春の労使交渉でも、コロナ禍を理由にベアを見送る企業も多いなか、月1500円のベアを実施(定期昇給分を合わせた賃上げ率は2・2%)で妥結した。2021年3月期決算は、売上高が前年比5・6%減の5950億円、純利益は81・1%減の22億円だった。
(朝日新聞デジタル 6月4日)

 外食業界はコロナの影響を最も受けた業界で、営業時間と酒類提供の“原状回復”を求めるシンポジウムも開かれた。すでに夜8時以降の営業や、酒類提供をはじめた店も一部あるが、さすがに上場企業にはできない。
 テイクアウトに注力しても収益は微々たるもので、店舗閉鎖と人員削減で凌がざるを得ないようだ。旅行業や観光業と同様に、コロナが収束してもテレワークの普及で人流が減少した以上、元の経営環境に戻ることは期待できない。事業モデルの変革を模索する動きがつづくだろう。
 その渦中でゼンショーホールディングスが2030年まで賃上げをつづけ、人員削減も行わないことを宣言した。インパクトの大きいニュースである。ゼンショーHDの平均年収は618万円(37.5歳)。高給ではないが、低くはない。しかし外食最大手企業でありながら、上場外食企業の平均年収ランキングでは18位に甘んじている。
 「業界動向サーチ」が各社の有価証券報告書に基づいて作成した「飲食業界平均年収ランキング」(2019~2020年)によると、上位10社は、1位・コメダホールディングス(936万円)、2位・スシローグローバルHD(848万円)、3位・BBサーティワンアイスクリーム(747万円)、4位・サンマルクHD(737万円)、5位・リンガーハット(733万円)、7位・トリドールHD(733万円)、8位・ダスキン(721万円)、9位・ロイヤルHD(708万円)、10位・吉野家HD(706万円)。
 上位10社に比べると、ゼンショーHDの618万円は見劣りする。賃上げの継続は不可欠なのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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