2021/05/18
第一生命ホールディングスは、新たに採用する営業職員の給与体系を2022年度から見直し、主に契約の件数や金額、資格に応じて支払う成果給の割合を引き下げる方針を決めた。無理に契約数を増やさなくても安定した収入を確保しやすくなり、優秀な人材の確保と定着につなげる狙いがある。
稲垣精二社長が読売新聞のインタビューで明らかにした。現在、入社5年目までの営業職員の給与は固定給が6~7割を占め、残りが成果給となる。22年度以降に採用する営業職員を対象にこの比率を見直し、成果給の割合をさらに低める。具体的な変更幅は今後、労働組合と協議する。
同社は山口県の80歳代の元営業職員が顧客から計約19億円を詐取した問題を受け、営業職員の人事・研修制度の見直しを進めており、今回の給与体系変更もその一環。営業拠点単位で課していた契約数などの数値目標を今年度は撤廃した。営業職員の約半数は入社6年目までに退職していたが、稲垣社長は「給与を安定させることで、長く仕事をしていけるようにしていきたい」と説明した。
(読売新聞オンライン 5月10日)
金融商品や不動産など資産を販売する業務にあって、過度なノルマ、過度な業績報酬のもとでは間違いを犯す担当者が必ず出てくる。昔も今も変わらない。
追い詰められた人間にコンプライアンス遵守は通用しない。この通弊は昔から何ら変わらない。“再発防止策”と称するコンプライアンス教育や管理体制をいくら強化したところで、過度な成果主義に対しては無力である。人間の心理を踏まえていない施策だ。
第一生命ホールディングスの稲垣精二社長は、毎日新聞(5月10日付け)のインタビューに、次のように答えている。
「当社の中で『トップセールス』と言われていた職員が起こした事案で、私もショックだったし全社に衝撃が走った。成績が良い社員に対して、コンプライアンス(法令順守)の徹底などで甘い部分があったと思っている」
「社員には21年1月にアンケートを実施して、4万数千件の回答が来た。『成績優秀者に対して、ものが言いづらい文化があるのではないか』との回答もあった。特別扱いする制度は改めようとしている」
成果主義を緩めると意欲が低下するという反論もあろうが、我欲にとらわれて強引な営業に暴走するよりはマシである。
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