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ベテラン役員のガバナンス論

上場会社のコーポレートガバナンス(CG)は、監査役(会)設置会社より監査等委員会設置会社が優れ、最良の形態が指名委員会等設置会社だとされる。
筆者はこの15年余り、社外取締役として、これらすべての形態を経験してきた。そこで明言できることは、形式以上に人が大切で、適格な人材を配置できる組織規律や企業文化がカギになるという点につきる。見栄えではなく中身だともいえる。
理屈上は、最近の理論はおおむね正しい。企業のグローバル活動にとっても重要だ。CGコード(企業統治指針)には真剣に対応する必要がある。
だが、気になる点も多い。まずその効果についての裏付けが不十分だ。CGコード上の課題を露呈した指名等委員会設置会社は少なくないし、何より企業価値との関係が不明である。
(中略)
 つぎに熟達したプロ経営者の存在が薄いことだ。学者や有識者など、研究と論評は専門だが経営はアマチュアという人たちの声が大きい。日本株式会社の光と影を知り抜いた経営者の本音の議論を聞きたい。(日本経済新聞 5月14日)

 社外取締役の業績評価がクローズアップされたほうがよい。スキルマップ、実績、評価が開示されれば、人選の基準も業務内容にも明確になる。
 10社近くの上場企業で監査役を務めた経験をもつコンサルタントは、社外監査役のあり方について「スキルマップを作成しても、それに従った人選や評価が行われているとは限らない。まして株主から見えにくい」と指摘する。
 この元監査役が重視しているのは社会取締役の人選で、社長にも候補者ひとり一人の可否を進言してきたという。何を採否の基準にしてきたのか。
「まず上場企業の取締役経営があることで、できれば代表取締役を経験していること。それから財務諸表を読めること。大学教授、弁護士、公認会計士など有識者は一般的な分析には長けているが、経営は論理だけではない。好き嫌いなど人間の心理に基づく営みであり、社内や取引先とのパワーゲームなど“政治”も大きく絡んでくる。この実態に社外取締役として関わるには、取締役として修羅場を経験していることが求められる。その経験がないと的確な意見もジャッジも出せない」
 同じ意見でも経験者が話せば説得力をもつが、そうでない立場からの発言は一般論に収まってしまうものだ。日経記事に書かれたように、経験者の話が求められている。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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