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ANA、今年は「ボーナスなし」…旅客需要低迷で労組に提示

全日本空輸(ANA)は10日、今年のボーナスを支給しない方針を固め、労働組合に提示した。コロナ禍で旅客需要の低迷が続いており、支給は困難と判断した。労組側は「年間で最低でも月給1か月分」との要望を経営側に提出していた。
 ANAを傘下に持つANAホールディングス(HD)の2021年3月期の連結最終利益は、過去最悪となる4046億円の赤字だった。国内外での変異ウイルスの感染拡大や、緊急事態宣言の延長など経営環境は厳しさを増している。
ANA社員のボーナスは例年、夏冬それぞれ2か月分が支給されてきたが、コロナ禍で昨年は夏が半減、冬がゼロとなった。月給も5%減とした結果、昨年は年収ベースで3割減となったが、ボーナスが不支給となることで、今年度は減少幅が広がりそうだ。
 ANAHDの片野坂真哉社長は1月の社員向けメッセージで、「雇用を守るが、賃金の我慢は続く」と訴えていた。会社側は住宅ローンを抱える社員向けに、住宅ローン返済に100万円、その他の用途に50万円を、それぞれ無利子で貸し付ける提案も併せて行った。
(読売新聞オンライン 5月10日)

 首都圏青年ユニオンの発表によると、阪急阪神ホテルズが219名の非正規労働者を2021年3月31日付で雇止めにしたことを受け、雇止め撤回を求めて同社と交渉中という。ユニオンは「阪急阪神ホテルズのような大企業による非正規の大量雇止めを容認すれば、ますます雇止めが横行するでしょう。決して容認できません」と述べている。
 この事案に比べると、大幅な収入減を強いられても、正社員は雇用が維持されている間はまだ何とかなる。ひとたび非正規雇用労働者に移行してしまうと、キャリア形成が進まず、なかなか正社員への復帰は実現しにくい。当然、生活の安定は得にくい。
 全日本空輸は今年のボーナスを夏冬ともに支給しない方針を組合に提示した。いくら雇用が維持されるとはいえ、ボーナスがゼロでは生活に支障が出て、ローン破綻の危機に瀕するかもしれない。そんなケースが頻発したら、社業にも影響がおよんでしまう。
 同社は同時に住宅ローンに1000万円、その他の用途にも50万円をそれぞれ無利子で貸し付ける提案も行った。利用すれば返済しなければならないが、返済の原資を確保できるまで年収が回復するかどうか。貸付金の利用に逡巡する社員も多いのではないか。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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