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改正会社法で役員報酬の透明化が進む

 改正会社法では、報酬の仕組みの透明化も進む。取締役への個別の報酬額について決定方法を定め、開示が義務付けられた。業績に連動する部分は指標や算定方法も示さないといけない。代表取締役などに報酬決定を一任する場合も理由や権限の行使状況を報告する必要がある。
 役員への報酬について、外部の説明に課題を抱える企業は多い。大和総研によると、東京証券取引所に上場する時価総額上位500社のうち、20年時点で業績に連動する報酬の計算式を示していたのは94社だけだ。半数以上の287社は、具体的な決定方法に触れていなかった。
 会社からのリスク補償や報酬は、役員の働きぶりにも大きく影響する。補償が貧弱なら訴訟などを警戒して萎縮しかねないし、報酬額が固定されていれば思い切った判断に踏み切る意欲が起きにくくなる可能性が出てくる。
 補償や報酬手続きが示されれば、経営陣が業績向上に積極的に取り組める環境なのか、株主らが吟味できるようになる。企業統治のコンサルティングを手掛けるHRガバナンス・リーダーズの内ケ崎茂社長は「役員にリスクテイクを促す土壌が整った」と話す。
(日本経済新聞 5月3日)

 役員報酬の納得性を得るには計算式を開示する以外にない。計算式が開示されていれば、高額過ぎるという批判も発生しにくい。カルロス・ゴーンが得ていたような法外な報酬も阻止できる。
 現状で上場企業の役員報酬はどんな水準にあるのだろうか。
デトロイトトーマツコンサルティングと三井住友信託銀行が共同で行った『役員報酬サーベイ(2020年度版)』で、東証一部上場企業954社の報酬総額水準の中央値が報告された。
売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額は中央値で9887万円。前年比0.6%のマイナスで、大半の企業で昨年並みだった。
 短期インセンティブ報酬を導入している企業の割合は74.2%だった。採用されている短期インセンティブ報酬では、「損金不算入型の賞与」を導入している企業が最も多く、導入企業の51.0%(361社)を占めた。
株式関連報酬(長期インセンティブ報酬)を導入している企業の割合は63.0%。採用されている長期インセンティブ報酬の上位2つは、「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」(177社)と、「株式交付信託(信託の設定による株式付与)」(174社)だった。  
今後は譲渡制限付株式の導入が進むと見込まれるという。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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