Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

求人数 業種・職種で明暗 円滑な労働移動、急務

厚生労働省が30日に発表した職業別有効求人数(パート含む常用)をみると、新型コロナウイルスで受けた影響の明暗が分かれる。
3月の有効求人数は全体で約201万人と前年同月比10%減った。このうち「販売の職業」は約19万人と同20%、「サービスの職業」は約47万人と同16%それぞれ大幅に減少した。
一方、医療や情報通信、建築などの「専門的・技術的職業」は約45万人と同6%減にとどまった。コロナ禍前から人手不足が深刻だった「建設・採掘の職業」は約12万人で同17%増えた。
 総務省の労働力調査によれば、2020年の転職者数は319万人だった。転職者は増加傾向で19年は351万人と比較可能な02年以降で過去最高だったが、コロナ禍で労働移動が停滞した。
(中略)
 今後はニーズの高い分野に人材移動を促すことが必要になる。医療分野や在宅ニーズで需要が見込まれる情報通信関連などが受け皿の候補に挙がる。田村憲久厚生労働相は4月30日の記者会見で「厳しい業種の人々が他の産業にスムーズに移動してもらえる体制、環境をつくる」と強調した。
(日本経済新聞 5月1日)

厚労省は2025年度までに特別養護老人ホームの定員のうち7割をユニット型(全室が個室)が占める目標を設定している。従来は入居者4人の相部屋による集団ケアが行われてきたが、介護保険制度の理念である尊厳の保持をめざすうえで、個別ケアが必須という観点から、ユニット型への移行を進めている。
ところが、現時点で達成率は5割前後にとどまっている。要因はユニットリーダーの人員不足である。人員不足が理念の実現をめざすうえで足かせになっている。
個室ユニット型施設の推進に関する検討会報告書は「約6割の施設でユニットリーダーを確保することが難しいとしており、約8割の施設でスキルや資質についてもユニット間で格差が生じている」と指摘。そのうで「ケアの質の維持に配慮しつつ、ユニットリーダーの確保方策と組織体制の確保が求められる」と提言した。
2021年度介護報酬改定では、個室ユニット型施設について定員が緩和されたほか、ユニットリーダーの確保を図る見直しも行われた。
見直しの趣旨は、原則常勤を維持しつつ仕事と育児や介護を両立できる環境整備を進め、離職防止・定着促進を図ること。育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加え、介護の短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱われる。
さらにサービス提供体制強化加算等の算定で、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した職員も、常勤割合に含めることが可能になった。
これらの緩和措置に加えて、他業種からの人材移動を促す強力な措置も検討しないと、なかなか人員確保には至らない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。