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米、再教育 投資惜しまず

日本企業の多くは「OJT」(職場内訓練)を人材育成の軸としてきた。厚生労働省の調べによると、通常業務を離れての「オフJT」(職場外訓練)に投じる費用は19年度に従業員1人あたり1万9000円にとどまる。OJTは従来業務の着実な遂行には効果があるが、業務そのものの変革には向かない。
米国では一般社員の再教育に投資を惜しまない企業が目立つ。米アマゾン・ドット・コムは25年までの6年間で7億ドル(約760億円)を投じ、米国の物流センターなどで働く一般社員10万人向けに機械学習などの講座を提供する。米グーグルもAIなどを学べる一般向けオンライン研修プログラムを公開している。
社員にとっても研修機会の拡充は朗報だ。内閣府が20年2~3月に実施資や調査では、「オフJT」のリカレント教育(学び直し)を受けた人のうち収入が1割以上増えた人の割合は、受けなかった人を13・1ポイント上回った。
(日本経済新聞 4月8日)

 人材育成を促すマネジメントで独自の手法を開発・実践しているアドバンスト・メディア(東証マザーズ上場)は、音声認識システムで国内トップシェアを持つ。
 同社は、PDCAという一般的なマネジメント手法ではなく、独自に開発した「GAP(Goal-driving Actions with Perseverance)」という手法を稼働させている。直訳すれば「忍耐を伴う目標達成行動」だが、どんな仕組みなのか。
 鈴木清幸会長兼社長を取材したときに、次のような説明を受けた。
「PDCAはピーター・ドラッガー流のマネジメントで、サイクルが1回転したら止まってしまう。これに対して、GAPは目標が駆動する俊動(俊敏な動き)と耐動(諦めず、粘り強く)で成り立っていて、回転が連続していきます。未来を目の前に連れてくるために、いかにして回転を速くするかに全社で取り組んでいる」
 GAPを浸透させるキーワードは「共育」だという。
「当社の組織はどの階層も、リーダーと複数のプレーヤーで構成されたフラクタル構造(部分と全体が相似した構造)を形成し、リーダーは目標をつくり、プレーヤーが目標を成し遂げる支援をする。リーダーは教えず、どのようにすればプレーヤーが育つのかをプレーヤーから教わる」
 この手法をパッケージ化すれば、社員教育プログラムとしてヒット商品になりそうだ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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