2021/03/23
三菱ケミカルは4月、管理職約5000人を対象に最長6年間は転勤を回避できる制度を導入する。希望すれば現在勤める都道府県以外への転勤を避けられる。同社は人事異動のポストを原則公募制で決める方針で、勤務地も社員の意思で決まりやすくなる。優れた人材の確保に向け育児や共働きなどで転勤の負担が大きい社員に配慮する動きが産業界で出てきた。
導入する「勤務地継続制度」は、国内で働く管理職が対象となる。別の都道府県の勤務地へ異動を望まない場合に申請する。制度を使えるのは、3年間を1回として計2回の合計6年間分とする。制度を使っても給与は減らず、理由も問わない。
同社は社内のポジションを原則として公募する制度を4月から始め、勤務地を知った上での人事異動が増える見込み。公募で人事が決まらない場合には会社命令による異動も出るが並行して個人の事情に応じ転勤を回避できる仕組みも整える。
(日本経済新聞 3月17日)
20年近く前に聞いたエピソードだが、新卒で全国紙に入社した社員の希望部署が出版部門だったという。理由は転勤したくないからとか。当時から転勤を忌避する風潮はあったのだが、どの企業でも転勤辞令に対する拒否権は事実上なかった。
ほぼ3年後単位で転勤を繰り返してきた医薬品メーカーの営業所長は「自分は典型的に転勤族」という。単身赴任で、毎月1回、都内に住む妻子の元を訪問する生活が続いている。家族をともなう転勤も可能だが、子どもの転校を回避するために単身赴任を選んでいる。
転勤辞令をどう受け止めているのか。
「できることなら転勤はしたくありませんが、会社の辞令を拒否するという発想がありません。うちの社員は皆、辞令が出たらおとなしく従っています。転勤が多いことに対しても、会社の人事とは、そういうものだと割り切って受け止めています」
定年退職後には、転勤生活を各地での思い出として懐かしめる人が多いと聞くが、現役時代は家庭生活との両立で苦労するようだ。生活重視の流れを踏まえれば、転勤の見直しは進むだろう。
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