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落下傘トップもう限界 「上がりポスト」改革へ

 
ono20200911

「出向」や「プロパー(生え抜き)」は連続ドラマ「半沢直樹」の頻出用語だ。銀行本体を頂点とするピラミッドで子会社への出向は左遷、子会社のプロパー社員は蔑視の対象として描かれている。こうした銀行の常識は変わりつつある。
「やりたいことができると思って銀行に転職した」。三井住友フィナンシャルグループ(FG)子会社SMBCクラウドサイン(東京・港)の三嶋英城社長(38)がインターネットのニフティからキャリア採用で三井住友銀に転じた。SMBCクライドサインは新型コロナウイルスの感染拡大で追い風が吹く電子契約推進の実行部隊だ。ハンコ文化の権化のような銀行にあって、電子契約普及に汗をかく。
(中略)
 変化はグループ中核企業にも及ぶ。4月にSMBC日興証券の社長に就いた近藤雄一郎氏は7年ぶりの生え抜きトップだ。13年以降、三井住友銀が2代にわたって幹部を送り込んできたが「プロ」に託す。
 一般に銀行の子会社や関連会社の社長ポストは適齢期(52歳前後)を迎えた銀行員の事実上の「上がりポスト」だった。本人の適性に関係なく、銀行での最後の職位と子会社の社格に応じて行き先が決まる。
(日本経済新聞 9月4日)

 本社の経営人材の育成の場として、30代に子会社社長を経験させる人事がある。経営経験を積ませると同時に適性を見極めるのだが、この人事では、子会社社長は意欲的に働く。人間関係にも気を配るものだ。
子会社には年上の役員と社員も多く、プロパーに対して上から目線では、その姿勢が風評となって本社の経営幹部にも伝わってしまう。実績を上げられなければ、経営人材として罰点を付けられてしまう。
だから当人は落下傘ではいられない。プロパーの能力を引き出すために人間関係にも配慮する。
だが、50歳を過ぎて上がりポストとして子会社社長に天下った場合、心機一転、新天地で奮闘する例もあるが、無難に任期を全うすることに専念する例も多い。“上がり”なのだから、やむをえない。革新的な経営を求めることは、ないものねだりに近い。しかも、社長が落下傘組の指定ポストになってしまうと、プロパーの意欲にも影響をおよぼしかねない。
要は、グループ内の社格を重視してグループ内秩序を優先するのか、それとも子会社の業績向上を優先するのか――。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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