2020/09/04
日本企業が「ジョブ型」の雇用制度の導入に動き出した。一人ひとりの職務を明確にして、責任の大きさと成果で報酬を決める。だが年功序列・終身雇用といった特有の雇用慣行に親しんだ日本企業の導入には課題も多い。日本におけるジョブ型雇用の論点を探る。
全社員のジョブ型雇用への移行を目指す富士通。総務部門はジョブディスクリプション(職務記述書)と呼ばれる文書の作成に追われている。すべての職務内容を明確にした上でグローバル共通で職責を格付けする。「販売」「マーケティング」といった部門ごとに従業員に求めるスキルも明文化していく。
移行後は上司に命令された異動は大幅に減り、社内公募で能力をアピールしポストを移ることになる。報酬は職責の格付けに応じて決定。職責が重いポストに就けば報酬が上がる一方、ポストが変わらなければ報酬は上がりづらくなる。仕事の範囲が明確なので、自分の仕事が終われば上司の目を気にせずに帰宅しやすくなるかもしれない。
(中略)
ジョブ型の導入は日立製作所やKDDIなども表目するなど様々な業種で検討が始まった。
(日本経済新聞 8月27日)
ジョブ型雇用では、報酬の対象は業務であり、人ではない。同一労働同一賃金は当然の制度だが、じつは同一労働同一賃金の概念は戦後まもなく提唱されていた。作家の西村京太郎氏が自身の戦中・戦後を回想した著書『十五歳の戦争』で、同一労働同一賃金に言及している。
西村氏は1948年に旧制中学を卒業し、人事院に就職した。そのときの研修で米国の人事院から派遣された研修を受け、同一労働同一賃金の実現を説かれたという。
著書に次のように書いている。
<あれから七十年たった今、新聞を見たら「同一労働同一賃金」という言葉があってびっくりした。七十年たっているのに、昭和二十三年の「同一労働同一賃金」の理想が、いまだに実現されていないのかと首をかしげてしまった。このありさまでは、日本には同一労働同一賃金は根付かないと思った>
同一労働同一賃金では、正規雇用者も非正規雇用者も担当業務が同じなら、賃金は同一でなければならないが、実現は考えにくい。雇用形態格差はいわば岩盤格差である。
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