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丸紅、他部署への協力に報奨金 最大200万円

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丸紅は他部署に協力した社員に報奨金を支給する制度を設ける。貢献度に応じ、最大200万円を支払う。社内に蓄積された知見やノウハウを共有して新たな事業を生み出しやすくする狙い。スキルを持つ社員の意欲を引き出す新たな試みで、社内に根強く残る縦割り意識を打ち破りたい考えだ。
新しい制度では、各部署が専門的な知見や顧客先の情報などを公募する。貢献度に応じてコインを付与、1コインあたり1万円として賞与などに反映させる。
報奨金は会社で予算化し、協力を得た部署が支給する。1件あたり最大200コインを付与できる。労働組合と協議の上、2020年度中に導入する。

例えば、エネルギー部門の社員が、新しいデジタル技術を求める顧客の情報をシステム事業を手掛ける部署に提供、実際に大きな収益を生み出すビジネスに育った場合、200コインを付与するイメージだ。一人ひとりの社員が持つ人脈やアイデアを部署の枠を超えて活用する契機にする。
社員の貢献度に応じて報奨金を出す仕組みとしては、半導体製造装置大手のディスコが取り入れた社内通貨「ウィル」が知られる。
(日本経済新聞 8月24日)

他部署への協力に報奨金を支払う制度は、経営資源を有効に活用し、想定外の付加価値を生み出すかもしれない。まして、丸紅ほどの会社なら豊富な経営資源が各部署に潜在しているのではないか。
一方で、丸紅ほどの会社でも、他部署への協力に報奨金を支払う制度を導入しなければならないほど部署間の壁が高く、部署同士の協業ができていないのか。あるいはセクショナリズムが散見されたのか。そんな疑問も湧いてくる。丸紅の実態は知らないが、たぶん縦割り組織の弊害が顕在化しているのだろう。
かつて内閣官房長官の後藤田正晴は、内閣官房の幹部に向かって「省益ではなく国益を考えよ」と訓示したという。会社経営にあっては、優先すべきは部署益よりも社益である。
だが、硬直化した縦割り組織では、社員の視野は自部署にとどまりがちで、社益にはおよびにくい。この危機感が丸紅を動かしたのだろうが、報奨金制度が組織風土を変革する流れに向かえば成功だ。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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