2020/08/31
人事院が21日に発表した2020年度の国家公務員総合職試験(キャリア職)の合格者をみると、合格者(大学院生を含む)1717人のうち、東京大学の卒業生は249人(昨年度は307人)にとどまり、300人を割り込んだ。
東大卒の合格者は16年度までは、ほぼ400人を超える合格者を出していたが、以後は漸減傾向が続き、20年度は前年度より50人以上も減らす大幅減少となった。大学別の比率でみても、かつては3人に1人が東大卒だったが、20年度は14.5%と過去最低水準となった。
総合職試験の申込者数は1万6730人で、合格の倍率は9.7だった。大学別では、1位が東大、2位が京都大学の131人、3位が早稲田大学の90人、以下は北海道大学の69人、東北大学の65人、中央大学の60人、立命館大学の59人、岡山大学の56人などの順で、東大や京大に集まっていた合格者が私立大、地方大学を含めた分散化の傾向がみられる。女性の合格者数は511人で比率は29.8%で昨年度の31.5%を下回った。
東大の卒業生がここまで、キャリア職の合格者を減らした理由は、国政の企画立案を担う官僚職場の勤務条件が魅力をなくしていることが挙げられる。官僚のアンケートの結果などを見ると、残業時間が多いことが一番嫌われているようだ。特に「国会対応」と呼ばれる野党議員の質問に対する政府側答弁の準備にかかる際限のない待機時間には絶望感を感じるキャリアも多いようで、結果的に数年で退職するキャリアが増えている。
(Wedge 8月22日)
このニュースが出た数日後に、東大卒のキャリア職合格者数が減少したことが、社会保障のシンポジウムで話題になった。シンポジストに東大卒のキャリア官僚が参加していたからだが、この官僚は「東大卒の後輩が減ることについては寂しさも感じる」と心情を吐露したうえで、こんな見解を述べた。
「たぶん幸せのカタチが増えたのだと思います。東大生のキャリア選択のなかで、官僚になることのウエイトが下がったのでしょう。その意味では、東大生にとっては好ましい傾向であるという見方もできるのではないでしょうか」
たしかに東大出身者の就職先は中央省庁か大手企業という時代は、とうに過ぎ去った。ベンチャー企業への就職や起業する例も珍しくない。本来、学歴にかかわらず、どんな仕事に就いてもよいのだが、伝統的に階層意識の呪縛があった。
その呪縛から解き放たれたことが「幸せのカタチが増えた」ことなのか。キャリア官僚の過酷な就労環境が改善されても、選択肢が増えれば、キャリア職合格者は減っていくのではないか。
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