2020/08/17
中途採用時に、応募者の性格や前職での振る舞いを調べるレファレンスチェックが、新進企業中心に広がっている。調査会社が接触する相手は応募者の元上司や元同僚。だが手法が不適切だと、調査協力者や応募者に負担を強いる恐れがある。転職市場が広がるなか、再チャレンジを妨げる可能性もある。
「昨秋開始のレファレンスサービスは絶好調。実施数は約5000件になる」。バックチェックの名で前職調査を提供するROXX(東京・港)の中嶋汰朗社長は話す。
サイバーエージェント、スマートHR、フリー。同社のサイトには利用企業の名がずらりと並ぶ。転職が盛んになるなか、中途採用にミスマッチ防止が狙いという。調査はネットで完結する。利用企業は応募者に「同意」を取り、同社は応募者が名前を挙げた上司・同僚・部下に質問を送る。回答はアルゴリズムで解析し①応募者の思考の特徴②採用後考えられるリスク③次の面接で聞く質問――を利用企業に戻す。(中略)人手による調査を続ける調査会社もある。「経歴詐称は多い。企業と応募者が公平なテーブルにつけるようにするのが目的」。調査を40年手掛けてきた企業サービス(大阪市)の松谷広信会長は意義を語る。
(日本経済新聞 8月8日)
1948年創業の児玉総合情報事務所(東京・中野)には、企業から採用調査の依頼が継続的に入ってくるという。社長の金澤秀則氏は、経営幹部のスカウト時に調査が依頼されることが多いという。
「厚生労働省は、本籍地や出生地などの身元調査、宗教や思想調査などへの配慮を求めていますが、法的に採用調査は禁じられていません。例えば高額な報酬で経営幹部をスカウトする場合、職務経歴書と面接だけの判断ではリスクが大きいので、厚労省の指針に反しない範囲で候補者を調査することは少なくありません」
児玉総合情報事務所は、こんな案件も手がけた。ある会社で、セクハラを理由に退職した元社員(女性)がPTSD(心的外傷後ストレス障害)に罹って再就職できずに困っているという理由で、会社に慰謝料を請求してきた。会社は彼女の現況を把握するために調査を依頼してきたのだが、児玉総合情報事務所の調査員が尾行したところ、すでに彼女が他の会社で働いていたことが判明した。調査報告書を提出したのち、会社は調査結果を本人に報告したのだろうか。速やかに彼女は請求を取り下げてきたという。
採用リスクは、金澤氏が指摘するように職務経歴書と面接だけでは把握できない。調査の手間を惜しまないほうがよい。
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