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社長報酬、日米格差12倍

日米間で経営トップの報酬格差が広がっている。2019年度の社長、最高経営責任者(CEO)の平均報酬額は米国が16億2千万円と、日本の1億3千万円の約12倍だった。18年度(11倍)から拡大した。日本企業の役員報酬は成果報酬部分の占める割合が小さく、引き上げが課題になっている。
デロイトトーマツが、各国の主要な株価指数に採用される上場企業のうち、売上高1兆円以上を対象に社長、CEOの報酬総額を調査し、中央値を算出した。
日本の報酬額は1憶3100万円で、18年度の1億3500万円をわずかに下回った。一方、米国は16億1700万円と3%増え、格差が広がった。12月期決算の多い米国では新型コロナウイルスの影響も限定的だった。
日米では成果報酬の比重が異なる。日本では報酬全体の57%が固定給だが、米国ではわずか9%。
(日本経済新聞 7月19日)

社長報酬の日米比較をめぐる議論は、日本企業の社長報酬の水準がグローバルスタンダードに追いついていないという論調に流れ、米国の水準が高すぎるという見方は弱い。
社長報酬は米国が高すぎるのか、それとも日本が低すぎるのか。合意形成された適正水準が示されていない以上、答えは出ない。

社長に就任して成果を上げれば、破格の収入を得られる――この現実が社員に夢を与え、勤労意欲を喚起するという意見もある。一方で、破格の社長報酬を支給すれば、著しい社内格差を感じて社員は勤労意欲を低下させてしまう。自分たちの犠牲の上に社長報酬の原資が確保されているのかと。

かつて日本では、社長の年収は新入社員の7倍が相場といわれた時代もあった。新入社員の年収が300万円なら2100万円だが、いまでは上場企業の執行役員クラスの水準だ。贅沢癖がなければ、2100万円なら十分に余裕のある生活はできるが、会社を率いるエネルギーは湧き上がってこないかもしれない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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