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ハラスメント保険、急拡大 4年で4倍弱

ono20200526

職場でのいじめや嫌がらせ(ハラスメント)に備える保険市場が急拡大している。損害保険大手4社の契約件数は2019年度までの4年間で3.8倍に増え、足元でも好調を保っている。法整備などに伴って企業の経営環境が激変し、経営者のリスクへの認識が高まっていることが背景にある。保険各社はトラブルの多様化に合わせて補償範囲を広げ、飽和状態にある市場の開拓を狙う。
(中略)
ハラスメント保険の加入者は企業。ハラスメント行為への適切な対応を怠ったなどとして従業員から損害賠償を求められた場合、賠償金や裁判費用を賄う保険だ。例えば従業員1000人規模の製造業で年間保険料は約90万円で、最大3000万円(免責10万円)が補償さえるという。
契約時にハラスメントを防ぐ社内の体制や過去の発生件数などを考慮する。加害者本人への損害補償請求は補償せず「保険に加入しているからハラスメントを放置しても構わない」というモラルハザードを防ぐという。
(日本経済新聞 5月20日)

厚生労働省が昨年6月に発表した2018年度のパワハラ相談件数は前年度比14.9%増の8万2797件。過去最高を更新した。
パワハラは社内の空気を険悪にするだけではなく、経済的損失も引き起こす。被害を受けた社員がユニオンに駆け込めば、ユニオンは会社に団体交渉を申し込む。交渉の結果、多額の賠償金を支払わせられる例が増えているという。

人事労務コンサルタントによると「ユニオンの数は以前よりも増えて、全国に7000団体ぐらいあるらしい」。被害者にとっては相談できるインフラが拡充したといえるが、企業にとってはリスクが増大した。
「行き過ぎた指導だったが、ハラスメントの意図はなかった」――この釈明は通用しなくなった。
このコンサルタントはパワハラ解消策として、加害者の属人性を指摘する。

「パワハラを起こす人には自己愛性パーソナリティ障害の人が多く、つねに自分を正当化して、他人に対して攻撃的になりやすい。医療的な措置が必要ではないのかと思った場合は、本人の同意を得た上で産業医につないでいる」
ハラスメント対策として多くの企業が研修を導入しているが、研修だけでは防げないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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