2019/10/18
政府がめざす「全世代型社会保障」に向けた今後の制度改革の柱が出そろってきた。厚生労働省は年金と賃金を合算して一定以上の収入があると、年金を減らす在職老齢年金を見直し、対象になる高齢者を減らす方針だ。70歳までの就業機会の確保も進め、確定拠出年金に掛け金を拠出できる期間の延長も検討する。看板は「全世代型」だが、今のところ「70歳まで働く」ことを軸とする高齢者向け政策が目立つ。
在職老齢年金は65歳以上の場合、月収45万円を超すと年金が減る仕組み。厚労省は月収基準を62万円に上げる案を軸に検討する。対象者は今の半分の18万人程度になる見通し。2020年の通常国会に改正案の提出をめざし、実現すれば少なくとも20万人弱の高齢者は収入が増えそうだ。
ただ現状の水準でも年金減額になっているのは企業幹部など比較的恵まれた層だ。在職老齢年金は一定以上の収入のある高齢者への年金支給の一部を我慢してもらい、将来世代の年金原資を温存するためにある。(日本経済新聞 10月8日)
日本老年医学会が2017年に高齢者の新しい定義を提言した。現行は、65~74歳が前期高齢者、75~89歳が後期高齢者、90歳超が超高齢者だが、提言では、65~74 歳が准高齢者、75~89 歳が高齢者、90歳超が超高齢者である。
提言発表の記者会見では、年金制度などには反映させる意図はないという趣旨が述べられたが、厚生労働省幹部に尋ねたら「この種の発表は社会保障制度の変更に裏でつながっていることが多い」と説明された。
案の定、ほどなく公的年金の支払い年齢の引き上げが議論され、少なくとも70歳まで就労しないと老後の生活設計に支障をきたすような空気が漂いはじめた。ここで打ち止めになるのか、さらに年金支給額にインセンティブを付けて75歳までの就労へと誘導するのか。
日本老年医学会の提言にしたがって、高齢者の定義を75~89歳に変更し、高齢者になるまでは働きつづけることが標準になる――この政策誘導は着々と進んでいる。
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