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経営者受難の時代は誤り

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今年度ほど株主総会で株主提案に対し、ほかの株主(機関投資家を含め)からの賛成が多かった年は無かったといわれる。情報開示が進んでいく中、投資家からの視線は厳しさを増し、「経営者受難の時代の到来」とみる向きもあるようだ。だが、その考えは誤りである。

そもそも経営者が資本家(株主)から企業の管理を「委任」されていることに立ち戻れば、求められるのは専門的な知識や能力を基礎に経営することである。現代では企業が「従業員」や「顧客」、さらに「社会」というステークホルダー(利害関係者)といかに共存共栄を目指していくかも要請されている。

(中略)

会社側の提案を議論して、その諾否を導くためには、構成員である取締役、特に社外取締役の責任は重要である。能力、専門分野、背景などが十分に網羅的か、すなわち「ダイバーシティー性(多様性)」が担保されているかが論議の的となる。女性や外国人の登用という話題が先行しているように思えるが、企業が10~20年後を考えて事業計画を策定するには、より広範な要素が検討されなければならない。(日本経済新聞 9月26日)

日本経済新聞の「私の履歴書」に一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が連載している。9月26日掲載の連載25回目によると、野中氏は、富士通、エーザイ、三井物産、セブン&アイ・ホールディングス、トレンドマイクロなどの社外取締役経験に就任してきた。

この記事で野中氏は社外取締役の問題点について次のように指摘している。

「企業経営に携わった経験がある社外取締役は細部に目を向け、有識者の社外取締役は経営の実態を踏まえない空理空論を唱えがちだ。議論はまとまらず、混乱が起きてしまう。内容はどうであれ、取締役会で発言すれば議事録に記録が残り、社外取締役として仕事をしているエビデンス(証拠)になる」

社外取締役に何を期待するのか。社外取締役の評価項目や評価基準を明確にしないと登用した成果を検証できず、適切な人選もかなわない。女性や外国人を登用して「ダイバーシティーを踏まえている」と主張したところで、問われるのは形式でない。あくまで発言の中身である。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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