2019/09/28
社員が自分の知人らを紹介する「リファラル(紹介)採用」が日立製作所や荏原、NTTデータなど大手企業に広がり始めた。人手不足で各社は即戦力になる中途採用に力を入れているが、コストに見合うだけの人数を確保できないケースも目立つ。新卒で採用した人材に頼る日本型雇用が崩れるなか、米国などで定着する採用手法が新たな潮流になりつつある。
「いい部分も大変な部分も聞いていたので迷わず決めた」。日立でシステムエンジニア(SE)として働く向谷耕平さん(28)は2018年4月に中途入社した。きっかけは友人の粗油会だった。
従業員200人規模の中堅システム開発会社に新卒入社して3年。仕事に慣れた半面、業務範囲が限られていることに物足りなさも感じていた。いくつかの転職サイトに登録したが、決心がつかず動き出せずにいた。
そんなもやもやした悩みを同じSE仲間で日立社員の太田勇紀さんに打ち明けた。以前、ある共同プロジェクトで一緒に仕事をしたときに意気投合し、それ以来頻繁に杯を交わす仲になった。「よかったら一度うちの人事と話してみたら」。太田さんは向谷さんに無料通話アプリ「LINE」で、あるサイトにつながるURLを送った。日立社員が他社に努める友人や知人にのみ送ることができる専用の採用サイトだ。
(日本経済新聞 9月20日)
社員に知人を紹介してもらって中途採用し、紹介者に報奨金を支払う方法は昔から散見された。ただ、報奨金が十数万円におよぶのは、さすがに大企業である。
30年近く前、ある中堅コンサルティング会社が社員紹介制度を設けたが、報奨金は紹介採用1人につき5万円の報奨金だった。報奨金を目当てに次々に知人を紹介する社員もいるのではないか。当初はそんな懸念もあったそうだが、採用候補者を紹介する以上は責任がともなう。
制度の乱用は見られなかったというが、入社後に期待通りの成果を上げられず、ほどなく退職に至るケースもあり、紹介した社員は気まずい思いをしたらしい。信頼性の担保が否定されたようなもので、以後は紹介を控えたのではないだろうか。
会社が社員に期待するのは目利き能力である。社風に適応できるかどうか。さらに保有スキルが採用スペックに合致するかどうか。紹介採用を実施する米国系コンサルティング会社の採用担当者は「採用候補者のスキルを一番把握しているのは、仕事で付き合いのある同業の知人です。ミスマッチを防ぐ目的に紹介採用をはじめました」と話していた。
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