2019/06/28
株主総会の招集通知で取締役候補の素養や経験を一覧表にまとめた「スキルマトリックス」を採用する企業が増えている。日本総合研究所によると2019年の株主総会で20社がスキルマトリックスを導入し、18年の6社から3倍超に増えた。経営や財務などに関する能力を分かりやすく示すことで、株主に取締役会の機能や多様性を理解してもらおうとの狙いだ。
日本総研が東証の時価総額上位500社を対象に調べた。神戸製鋼所やエーザイなどが19年から新たに採用し、16年の1社から3年で大きく増えた。企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)で取締役の多様性の確保を求められたことが背景にある。
神戸製鋼は品質不正を受けてガバナンス改革の一環で導入を決めた。電力や素材といった事業分野ごとの専門性も示し、取締役候補が適任であることを訴える。
スキルマトリックスは、08年のリーマン・ショック後に取締役の実効性への関心が高まり米国を中心に採用が広がった。日本総研によると18年時点で米国の代表的株価指数であるS&P500採用銘柄のうち100社超が導入している。
(日本経済新聞 6月20日)
スキルの見える化は合理的な手段で、役員人事の透明化を図るうえで納得を得られやすいだろう。ただ、スキルマトリックスが掲載された招集通知を受け取った株主が、スキルマトリックスに記入された素養や経験を的確に評価できるだろうか。
OB株主なら社業に精通しているので、スキルマトリックスの記入内容を的確に評価できるが、おそらく他の株主は鵜呑みにする以外にない。スキルマトリックスをもとに、役員人事の正当性について掘り下げた質問ができるとは思えない。
本来、マトリックスを構成する項目が的確かどうか、記入内容が妥当かどうかを理解できなければ、株主として判断を下せないはずだが、そのほうが企業には都合がよい。「株主総会を乗り切る」といわれるように、株主総会は企業価値の向上を議論する場ではなく、あくまで「乗り切る」対象なのである。
しかも株主総会の議長を務めるのは社長だから、いくらでも恣意的に質疑応答をコントロールできる。
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