Talk Genius

人と会社と組織を考えるニュースマガジン

2850人削減へ 大規模早期退職者を出した富士通の社内事情

fujitsu

今年に入り上場企業の希望・早期退職者募集が急増している。これまでのリストラ型から、グローバル社会に対応するビジネスモデル型への変化が指摘されている。注目されるのが2850人の早期退職者を出した富士通だ。同社が早期退職者募集に踏み切った背景を幹部社員が語る。
「うちは昨秋に事務部門社員の3割に相当する5000人の配置転換を実施しました。本体より稼ぐSE子会社3社を吸収合併したことで、もともと多かった間接部門の社員がさらに浮いたためです。配置転換先はほとんど営業部門への異動でした」

さらに聞いてみると、深刻な社内事情がうかがえる。
「間接部門の社員はSE関係の会社、及びSE担当から総務、経理に回されたケースが圧倒的に多く、『技術者が総務で何の仕事をしろというのか』『ソフトの開発をやらせないから稼げないんだ』といった不満を仲間同士でまき散らす者が増えてきた。こんな社員でも辞めろとは言えません。文句を言うなら稼いでこいと、ほぼ全員を営業に配置転換したんです」(日刊ゲンダイデジタル 5月31日)

これはジャーナリスト・木野活明氏が執筆した記事で、会社の本心が掘り出され、人事異動の実情をよく理解できる。
大手企業が間接部門の社員を直接部門に大量に異動させる人事には「できれば辞めてほしい」というメッセージがこめられている。当然、異動対象に指名された社員も会社の本心を察知しているが、あからさまな左遷であっても、思い切って転職に踏み切れる年齢はとうに過ぎている。
やむなく異動に応じても、新たな業務に適応できればよい。だが、異動先では若手社員の後塵を拝して居場所を失い、定年までしがみつく気力も消え、依願退職してゆくパターンが少なくない。しかもリストラ費用を回避できるため、会社もこの結末を望んでいる。

異動はチャンスを与える措置でも、雇用機会を保証する措置でもない。依願退職に誘導する措置だが、何ともスッキリしない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

この著者の記事を全て見る

Talk Geniusとは-

ヘッドハンティング会社のジーニアスが提供する人と会社と組織を考えるニュースマガジンです。