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公証人は「論功行賞」ポスト、検事正ら再就職…高収入も維持

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法務省と検察庁が、地検の検事正クラスの幹部らを早期退職させる際、同程度の収入が見込める公証人への再就職をあっせんしていたことが複数の法務・検察関係者の話でわかった。同省人事課がどの幹部をどこの公証役場に配置するかの原案を作り、直属の上司である高検検事長らが公募前にあらかじめ本人に意向を打診していた。こうした仕組みは、歴代の検事総長や法務次官も把握していた。

公証人は、任命の公平性や透明性を高め、民間への開放を促す目的で2002年度から公募制が導入されたが、法務・検察の人事に組み込まれることで事実上、形骸化していた。

複数の法務・検察関係者によると、検察では全国に50か所ある地検の検事正経験者のうち、天皇が認証する検事長に昇進しない検事正クラスの幹部は、「後進に道を譲る」との理由で63歳の定年を控えた60歳前後に早期退職を打診される。その際、検事長らから再就職先の公証役場名を告げられ、受け入れた場合、面接試験を経て公証人に任命されていた。(読売新聞 5月23日)

検事正クラスが公証人に再就職するコースが固定化している実態が、なぜ今頃になって報道されたのだろうか。これまでも関係省庁の職員なら誰もが知っていた事実で、伏せておくような人事ではない。この時期に大々的に報道することには、何らかの仕掛けが潜んでいるのだろうが、それを詮索するよりも、公務員のセカンドキャリアを論じたほうがよい。

検事の場合、検事正にまで昇進すれば退官して弁護士に転じても、法務顧問、社外取締役、監査役などの職が検察人脈から廻ってきて、食い扶持には困らないようだ。それどころか複数の関係先から得る収入の総額は、現職時代を上回るのではないか。

検事正OBの弁護士はこう説明する。

「検事は弁護士に転身すれば、それなりに仕事があるからら老後の不安はないが、検察事務官はそうはいかない。事務官を10年やれば司法書士の資格をもらえるけど、独立して事務所を構えても、経済官庁出身ではないので人脈もなく、簡単にクライアントを獲得できない。かといって、やはり経済官庁ではないので、天下り人事が問題になる以前から人事が世話してくれる再就職先はきわめて少なかった」

ただ、国家公務員は定年まで勤め上げれば、退職金と公的年金で人並み以上の老後生活を送れるので、セカンドキャリア開発が深刻な問題になっていない。恵まれているように見えるが、定年を迎えるまではガンジガラメの職場に奉じつづけてきたのだから、定年後の余禄は民間に比べて不平等ではない。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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