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キーエンス、平均年収2088万円

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従業員の平均年収は2088万円(18年3月期)――。キーエンスは給与でも上場企業の平均値の3倍超と屈指の高さを誇る。その分、仕事はハードだ。

営業担当者の成績ランキングは常に社内で公表され、一定以下の順位にとどまると個別面談を受けることもある。「営業車には全地球測位システム(GPS)が付いており、予定時間と結果が10分ずれた際、上司に理由を問いただされた」(地方の営業担当者)。労務管理は極めて厳しい。

だが実態は、根性頼みのモーレツ営業とは全く異なる。緻密な分析を基にした「データ営業」こそが同社の特徴だ。

(中略)

キーエンスの強みは、足で発掘したデータと新製品の高速開発に不可欠な人材だ。ある役員は「成長に伴い新卒採用を大量に増やし、従業員数が増えているのが理由だ」と話すが、「開発部門で辞める人はあまり聞かないが、営業部門は比較的多い」と元営業マンは話す。(日本経済新聞 5月8日)

キーエンスの営業部門の実態は知らないが、これだけの高給でも退職者が結構出るのは、よほど過酷なのだろう。心身ともに消耗してしまえば、もはや高給は関係ない。

営業車がGPSで監視されるのは、会社にとっては営業管理の一環だが、営業マンにとってGPSは“サボリ防止システム”で、いかにも気味が悪いのではないか。ジョージ・オーウェルのSF小説『1984年』の光景を想起させる。

年収が大幅にダウンして、生活水準もダウンしても、心身に支障をきたさない環境を求めて転職に向かう。だが、過酷な職場環境を承知のうえで入社するのなら、労務トラブルには至らない。

よい例が外資系の金融機関やコンサルティング会社である。社員も長期勤務を考えず、短期間で稼いでスキルを身につけ、次のステップへの踏み台として入社してくる。キーエンスの場合は、外資系ほどではないが、会社にも社員にも同様の割り切りが定着しているのだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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